2018年の活動方針、もとい例のHTML本について

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


はてなブログに引っ越してからというもの、毎年1月にはちゃんと年始のエントリーっぽいものを上げているので、今年もそれに倣って何か書いておこうなどと。ちなみに去年はこんな感じだった:2017年のウェブ活動方針とか

去年を振り返ってみると、毎月ブログエントリーはなにがしかアップしたし、WAIC WG4に関してはそれなりに貢献できたんじゃないかなあ、と。

今年の目標については、例のHTMLの本の執筆作業を加速させるべし、というのが至上ですね。毎月のブログエントリーは、なにがしかHTML本にまつわる何か(書籍内容にまつわるネタだったり、書籍に関する周辺事項だったり)を記せれば御の字かなあ…と。
そんなこともあって、タイトルから「ウェブ」を取っ払ってみました。取ったところで何が変わるわけでもないと思うのだけども、時間をつぎ込んで行くべしというある種の決意表明ということで一つ。



例のHTML本の名前については、公式にはまだ何も決まってません。私はこれまで便宜上「例のHTML本」と呼んでいる状況だったりする一方で、共著者の伊原さん(@magi1125)は例のHTML本を「ジャスティス本」と呼んでいるみたいです。
ただまあ「ジャスティス」というのは結構アクの強い呼称なので、個人的には何かコンセプトを絡める愛称を付けるとしたら、「ラダー本」と思ってるんですよね。
このラダーというのは「はしご」のことなんだけども、IBCパブリッシングが出版している「ラダーシリーズ」という本があって、これはどういうものかというと、

ラダーシリーズは、「はしご (ladder)」を使って一歩一歩上を目指すように、学習者の実力に合わせ、無理なくステップアップできるように開発された英文リーダーのシリーズです。 リーディング力をつけるためには、繰り返したくさん読むこと、いわゆる「多読」がもっとも効果的な学習法であると言われています。

ラダーシリーズとは: IBCパブリッシング

とまあ、こんな感じ。英語をHTMLに置き換えると、目指す本の位置づけってそういうことなんじゃないかなと。つまり、HTMLというものを極める上で、最終目標としてはHTML仕様を読むという行為は避けられない、と。しかしながら、英語という障壁を脇に置いても(たとえ実用に耐えうる日本語訳があったとしても)、いきなり仕様を読むのは難しい。その最終目標にたどり着くまでのヒントや補助というものを盛り込めれば、とは個人的には思っています。




例のHTML本はそれはそれでやるとして、WAIC WG4の方も引き続きコントリビュートしていきたい。WCAG 2.1が予定では今年に勧告ということなので、WG4で勧告の翻訳を出せるようにしたいですね。自分で公表している翻訳物は…若干HTMLの方は諦め気味ですけど、去年はWAI-ARIA 1.1が勧告になり、今年はCSS3UIが確実に勧告になるので、徐々に収束しているのかなと。

若干締まりがない感じもしますが、まあこのブログでそんなに肩肘張っても仕方がないですし、今年も気楽にいければと思います。

W3CからのWHATWGに関するアナウンスメントについてのメモ

おことわり:結構いい加減です。というかあんまりわかってません。誤りも含まれるかもしれません、というかある。マサカリは歓迎します。

TL;DR

  • WHATWGがガバナンスのある標準化団体に近づいた。Microsoftも今や一員となった。
  • 2つのHTMLの表面上の鋭い対立は終わるだろう。両者は対抗しつつも当面は共存し続ける。

以下、長いメモ

WHATWG Working Mode Changes | W3C Blog
https://www.w3.org/blog/2017/12/whatwg-working-mode-changes/
The WHATWG Blog — Further working mode changes
https://blog.whatwg.org/working-mode-changes

方やW3C CEOから、方やWHATWGの筆頭Editor*1の投稿だったりするので、まあそれなりの重みがあるのかなと。それにしても、W3Cの方はシンプルで、WHATWGの方は結構長いというのは興味深い。W3Cの文書が短く箇条書きされているので、箇条書きを1つずつ引用していく感じで。

A Royalty-Free patent policy aligned with the W3C Patent Policy

その辺の文書を漁ってもらうと*2Microsoft知財関係のポリシーがないためにWHATWGに参加しない、ということがあったのだけど、W3Cの特許ポリシーと同様な知財ポリシーを持つようになったと。Microsoftの中の人のツイート

なんかにあるように、これによりMicrosoftもついにWHATWGに加わった模様。これで、ChromeSafariFirefox、Edgeと主要ブラウザーすべてのベンダーが名実ともにWHATWGに勢揃いということに。

次に、

The notion of having a Review Draft (which the WHATWG is using for their patent commitments)

だけどもReview Draftというものが新たに加わるらしい。これは何なのかというのがWHATWG Blogのほうにそのまま書いてあって、

What are Review Drafts and how do they relate to Living Standards?

The Living Standard is the living, changing standard with the most recent feedback incorporated. This is the document that developers and implementers should use, and that other standards organizations should normatively reference. Review Drafts are used by attorneys to determine if any patent exclusions are necessary.

Features in Living Standards that are controversial will be clearly labeled with a warning. They will be omitted from the next Review Draft if the controversy cannot be resolved in time.

適当に訳すと、「Living Standardは、最新のフィードバックをともなう、生きている、変化する標準です。これは、開発者と実装者が使用すべきものであり、他の標準化団体が規範的に参照すべきものです。Review Draftは、もしあれば特許の排除が必要かどうかを判断するために弁護士が使用します。物議を醸しているLiving Standardの機能は、明確に警告が付けられます。議論が時間内に解決できない場合は、次のReview Draftから省略されます。」

ということらしい。ものの見方によっては、ついにWHATWGにもバージョン固定されたドラフトが出現すると解釈できるわけで、これはもしかしたらもしかすると、ウェブの外の標準化団体からWHATWGのReview Draftが参照される日が来る…のかもしれません。

The notion that features only go into the Living Standards if they have multiple implementation commitments and tests

「機能が複数の実装のコミットメントとテストを持っている場合にのみ、Living Standardに入る」…真面目に追いかけていないのでWHATWG側に変更が入ったのかどうかすらわかってないマン。

Continued partnership between W3C and WHATWG on testing

まあこのあたりは前から協力的だったと記憶しているので、引き続きやっていてきますよ、って事なんだと思う。

Permissive specification licensing with attribution (CC-BY)

もうW3C HTMLに無断フォークだとかパクリだとかなんて言わせない、って事なのかなと。(WebPlatWGも最初期と比較すればだいぶGitHubになれた…ような気がする)

Although we have asked them to stop doing so, the W3C also republishes some parts of this specification as separate documents.

1.2 Is this HTML5?

この文言が消えるといいですね(棒)

A code of conduct

行動規範、とだけ書かれても分からん…

雑感

まあHixieだったら面倒くさがってやらなかったんじゃないかというよりも、当時はそういうことがあまり求められてなかったんじゃないかなあ、みたいな。そういう意味で、知財ポリシーの整備はWHATWGにとっての1つの明示的な転換点なのかなあ、みたいな感じではあり。といっても、オープンソースなプロジェクトのガバナンスとか詳しくないので、そういう解説はよく分かっている識者にお任せしない…。

最後に興味深いツイートがW3C HTMLのエディターであるSteve Faluknerから。


まあ、半分その通りなんだけど、じゃあW3C HTMLがそこまで信用できるかっていうとそうでもないのが一番の問題なんじゃないですかね…(だからといって、WHATWG HTMLも鵜呑みにできるってわけでもないんですけど、いずれにせよ最初に見るのはWHATWG HTMLなので)。

いずれにせよ、2つのHTMLを行ったり来たりしないといけないのは、オリンピックイヤーになっても変わってなさそう……。

*1:少なくとも、私がそう認識しているという話

*2:単にちゃんと調べるのが面倒だっただけとも言う