WCAG 2.0関連文書レビューのご案内(6/14〆)

(いつものお約束:筆者はWAIC WG4のメンバーですが、WAICおよびWAIC WG4を代表するものではありません。あくまで個人的見解ですのでご承知おきください。)

WAICで翻訳文書のメンテナンスを担当するWG4(翻訳ワーキンググループ)は、解説書、達成方法集、およびクイックリファレンスのGitHub上での更新作業に区切りを付け、これまでの作業をwaic.jpに反映させるべく、5/30にWAIC全体に対してレビューの依頼を行いました。

レビュー対象の文書は次の通りです(いずれもGitHub Pagesのもの)

2017年5月から累積的にコミットがなされており、変更点は書き出すとキリがないですが、主なものはwaic/wcag20#155にまとめてあります。

さて、当ブログでは何度か触れたつもりですが、解説書と達成方法集の冒頭の訳注に記載されているとおり、WAIC WG4ではいつでも翻訳へのコメントを受け付けています。しかし人間不思議なもので、期限がないとなかなか行動をしないものです。そこで、今回のWAIC内部でのレビュー期間にあわせて、解説書や達成方法集に興味のある方でレビューをしてみませんか?というのがこのブログエントリーの趣旨です。


準備物

  • あなたの意志
  • あなたがレビュー作業に充てる時間

あると好ましいもの


レビューの仕方はいろいろだと思います。1つの方法としては精読することが挙げられるでしょうか。精読した上であなたが読んだ文章が次のいずれかに当てはまるならば、誤訳の可能性があります。

  • 明らかな誤字・脱字がある
  • 日本語として意味が通じない
  • 明らかに原文(英語)と乖離している(段落の数が違うなど)
  • WCAG 2.0訳と矛盾する記述・訳語がある
  • 解説書・達成方法集・クイックリファレンス間で記述の食い違いがある

もっと専門的な観点から考えてみたいという人はDQF-MQMエラー分類が参考になるでしょう。また、WCAG 2.0関連文書の訳出ガイドラインもありますのであわせて参考に。

これは筆者個人の経験ですが、本当に簡単な誤字・脱字というのは中の人が気づいていないからこそ残っているものだったりします。上記のような指摘箇所を見つけた場合は、次の方法でコメントください。

WG4への直接のコメント方法は、

です。今回のWAIC内部でのレビューコメント期間は6/14(木)までとなっていますので、それまでにコメント頂きますと、少なくとも筆者が喜びます。

WAICに直接コメントを送るというのは気が引けるので、筆者を通じてコメントをしたい、あるいは筆者にこの機会に便乗してWCAG2.0に関連する質問をしたい(?)という場合は、6/13(水)までに以下の方法でご連絡ください。

  • Twitterアカウント@momdo_へのリプライまたはDM
  • 筆者個人のメールアドレスへのメール(探せばわかります)

までどうぞ。

翻訳に対してコメントをする際は、

  • 日本語訳のどこが
  • どのようにおかしいと考えるか
  • (もしあれば)訳文をより良くする案

をお忘れなく。

ということで、みなさまからのコメントをお待ちしております。




追加情報(6月6日追記)

というようなコメントをいただいたので、ごく簡単なWCAG 2.0解説書・達成方法集の現状の補足説明です。

WCAG 2.0解説書・達成方法集は古いもの(2010年の解説書2012年の達成方法集)を更新したものであるため、古い翻訳のままの箇所があります(解説書はWG4内でレビューを行って、ある程度翻訳の見直しが行われています)。

また、JIS X8341-3:2010から2016に更新されたときに訳語の見直しが行われています(JIS X 8341-3:2016 解説を参照)が、変更された訳語についてそのすべてを反映できている訳ではありません。

アクセシビリティの祭典 2018 感想戦のようなもの

当日の様子はFRESH!に記録されています。スポンサー様々ですね→ https://freshlive.tv/tech-conference/210688

思っていた以上に濃密な時間でした。
当日の私がどんな様子だったかは、リンクは張りませんけどどこぞのTwitterのログを辿ってもらえば分かりますでしょうし、ハッシュでつぶやきまくったのでそのうち誰かまとめるんじゃないかと思うんですが(?)、まあだいたいそういう感じです(謎)。

個人的には仕様書の相手ばかりしていて、障害者の方々に接する機会が皆無といっていい状況ですから、実際に障害をもつ方に前で喋ってもらえるということ自体が新鮮だったなと。それも多様な障害を持つ方にお願いをして実際に講演頂いたわけですから…こういう機会はそうそうないのではなかろうかと。昨年も参加させてもらいましたが、昨年とは前で話をしてもらう面々がかなり趣が変わった感じで、振り返ってみると今年は今年で印象に残ったなあと。

いやこう、UDトーク(リアルタイムでのスクリーンへの文字起こし)とか手話完備とかという時点で情報保障の手厚さを見せつけられる訳ですが、障害当事者による手話や視線移動の講演とか、こう強力な殴り棒で殴られるような衝撃が個人的にはあって、その意味で印象に残るイベントでありました。

あとはまあ、WCAG 2.1のISO化への展望ですね。植木さんの講演の中でははっきりとは語っておられませんでしたが(JIS化に関して大きなクエスチョンとはいっておられたと記憶)、私のツイートに対してリプライをこういう感じで植木さんから頂いて、


要するに、6月以降にWCAG 2.1がW3C勧告になった後に、W3CがISOに対してどういう行動に出るのか…にかかっていると。勧告までの流れとしては、W3C TAGがWCAG 2.1に対してどういうコメントをする(した)のかというのはたぶん表に出てこないでしょうが、仮にコメント対応に手間取るのであれば最速6月から後ろにずれ込むのは予想されうる事態ではあり。何事もなかったかのように予定通り勧告に持ち込む…というのはちょっと都合がよすぎる気がしますし、個人的にはスケジュールありきの進行で本当によかったのかどうか奥歯にものが詰まったような感覚もあるので、一息入れてもよいのではという勝手な思いもあり。

勧告後は…W3C内のどのセクションがイニシアチブを取っていくのか、私はよく分かってないので、どこを見ていけばいいのか分からないのが一番のネックでしょうか。そもそもWAIをあまり観察していないのが本当のところなのですけれども。

あとは、本当にISOでWCAG 2.1をIS(international standard、国際規格)にしなければならないのかという必然性ですかね。WCAG 2.2が控えているなら、一旦TS(Technical Specification、技術仕様書)という形にしてしまい、WCAG 2.2が出たら改めてこれをISにしてしまう、という手もあるのではなかろうか…まあ完全に個人の妄想なんですけれども、WCAG 2.1の欧州の後押しだけでなく、中国も押しているというのは興味深かったですし、日本と北米はこれにのっかっていくのかどうか。

ええと…WCAG 2.1のWAICでの翻訳の進捗ですか、まあ気長にお待ちください…。

しかしまあなんでしょうか、濃厚なのはよいのですが、時間が足りない感じがですね。とくにLTという5分という制約に慣れておられない方も散見され、主催はLT講演者とちゃんと打ち合わせできていたのか…という疑念があったりなかったり。あと主催への注文としては、食べるところが少ないよみたいな告知が不十分だったのではなかろうかと(まあ、自分は幸いなことにサイボウズの小林さんにご飯を売って頂いたので、事なきを得ましたが…)。他にも、アンケートや質問を書く時間がなく、オフィシャルな方法でフィードバックせずブログに書くのが間違いなのではという話もあるんですが…というか、なぜネットではなく紙なのかという疑問もありますけれども。

そういう細かい運営への注文はあるのですが、多いに刺激を受けた一日でありました。アクセシビリティの祭典の運営に携わった方々、講演してくださった皆さま、当日私と直接話してくださった皆さまにこの場を借りてお礼申し上げます。どうもありがとうございました。

おまけ:
私以外の感想とか、スライドとかその他諸々は:アクセシビリティの祭典 2018のまとめ | 覚え書き | @kazuhitoがとてもよくまとまっていますので、あわせてどうぞ。