WCAG 2.1の「次」について

ここでいう「次」というのは2種類あって、1つはISOになるのかどうかという意味で、もう1つは文字通り、次のバージョンのWCAGがどうなるのかという意味でそのように書いてみました。

で、結論から言うと、前者は外からは動きがわからず、後者はこれと言った方針が定まっていないようです(大それたことを書いた割には、現時点でなんもわからん、という……)。以下、どういうところを調べたのか、というログです。単に今後どうなるのか知りたい方は、このエントリーにそれ以上の情報はありませんので、そっとページを閉じることをおすすめします💧

ISO化の動きについて

W3CのISOとのリエゾンはいくつかありますが、このうちWAIがリエゾンになっているのがISO/IEC JTC 1/SC35 WG6というグループです。前回のISOの代替テキストのエントリーで出てきたものですね。

今年8月末に、SC35の全体会合が開催されました。その会合の決議文書をインターネットで閲覧可能ですが、WCAGに関する文言は見当たりません。少なくとも、何かが決まってこのようにする、というレベルに達していないことだけは確かそうです。(会合で何らかの話があがった可能性はあるでしょうが、それを知る術は外部の人間にはないという。)

また、W3Cの年1度の会合である、TPACが10月22日の週に開催されましたが、WCAG 2.1を策定したAGWGIRCログを見た限りでは、ISOの文字は一度たりとも出てきていません。少なくとも、実務レベルではお世辞にも関心が高いという状態でもなさそうです。

ISO、W3Cとも表に出てくるレベルでは話題になっていないことから、今年はWCAG 2.1こそW3C勧告になったものの、ISOとしてはこれといった目立った動きがない、と言って差し支えないでしょう。次に情報が集まるとすれば、来年のCSUNでしょう。実際に足を運ぶ人たちに期待しましょう(?)

WCAG 2.1の次のバージョンについて

前出のTPACのログでは、Next Normative Workという議題が見えます。が、何かが決まったという気配はありません。WCAG 2.1の編集上のエラッタをWCAG 2.1.1として発行する?とか、WCAG 2.2とSilverどちらを進めるか?とか、そもそも2.1の作業は完了していないよね?とか(Understandingこそある程度揃っているものの、TechniquesはSuccess Criteriaに対して存在しないものがある)、課題を洗い出したと言ったところでしょうか。今のCharterが2019年10月末に期間が終了するわけですが、それよりも前に新しいCharterのドラフトがあがってくる(前出のログでは、遅くとも来年3月にはという感じのことがほのめかされている)ことが予想されます。

いずれにせよ、来年になればわかるという感じでしょうか。

雑感

わかれば苦労しない話ですが、やっぱり外からだとわからないものですね(棒)。
ISOになるかどうかがわからない以上、当然JISになるかどうかも見えてきません。
まあ、それはそれとして、個人的にはWAIC WG4の積み上がっているタスクを粛々とこなしていくしかないかなあと。

君はISOの代替テキストのガイダンスを知っているか?

代替テキストに関する情報源というと、HTML Standardの記述だったり、W3C EOWGの alt Decision treeだったりなんかが比較的知られているかなと思いますが、それとは別に、ISO TS(Technical Specification; 技術仕様書)*1として、ISO/IEC TS 20071-11:2012という文書が存在する。タイトルとして「Information technology -- User interface component accessibility -- Part 11: Guidance for alternative text for images」とあって、「画像の代替テキストのガイダンス」となる感じですね。

で、その中身ですが、一部をプレビューすることができます。もちろん国立国会図書館関西館に所蔵されています。さらっと読んでみたんですが、longdescっていう文字列が見えたので気力が…。まあ、面白そうなことは書いているんですけどね。しかしISO TSにlongdescへの言及がなされていることを鑑みると、HTML5 Image Description ExtensionW3C Recommendationとして存在するのは、政治的なものがありそうですね(個人の妄想です)。

なお、ISO/IEC CD 20071-11という草案*2が今月に登録されたとISOのホームページでは記されています。遅くても2年後に新しいISO/IEC 20071-11が策定されるのではないでしょうか。なお、審議はISO/IEC JTC1/SC35/WG6(W3Cリエゾン*3)で行われています。JBMIA(一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会)の国内委員会のホームページはあったりするので、多少の情報は得られるかもしれません(得られるとは言っていない)。

で、これISになったらJISになるんですの…?

*1:TSは端的に言えば、国際規格であるISより格が1つ下がる文書。国会図書館 リサーチ・ナビISO規格の説明では、「将来的にISO規格として採用される可能性があるが、標準化の対象が開発途上であるなど、ISO規格として直ちに発行できない場合に発行される文書」となっている。正確な定義はISO/IEC Directives, Part 1§3.1になるはず。まあ、ISとTSでは強制力が異なってくるけれども、その辺はやや脇道。

*2:ISOの策定プロセスは日本工業標準調査会:国際標準化(ISO/IEC)-ISO規格の制定手順を参照

*3:リエゾンの説明は https://www.jsa.or.jp/datas/media/10000/md_327.pdf#page=11 が詳しい