国交省の交通バリアフリー方面の検討会でウェブアクセシビリティに関する議事概要が結構アレゲな件

お題:バリアフリー:令和元年度第1回「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準等検討会」 - 国土交通省

どうやら公共交通のアクセシビリティ施策に関連して、事業者のウェブサイトについて、ウェブアクセシビリティの基準を作ろうず、という流れになっているっぽいです。公開されているウェブアクセシビリティ確保に向けたガイドラインの改訂(案)なんかを眺めてみると、レベルAとレベルAAに跨いだ「基本」として項目が列挙されており、WCAGのレベルのくびきを解き放つことができるんじゃないかとかは思っているんですが、議事概要を見ると結構なアレゲ感が。ちなみに、第2回は今日開催だったりするわけですが、まあそのうち資料やらが上がってくるでしょう。

議事概要からだと誰がしゃべっているのかがわかんないわけですが、構成員名簿を眺めると、大学、研究所、障害当事者団体、交通事業者(なぜか日航全日空がおらんけど)がずらずらっと並んでいるわけですが、こうせめてどの分野の人が発言したのかとかこう出てこないもんですかねえ。

以下議事概要を複写したものです。なお、●は構成員の発言内容、○は事務局を含む国土交通省の発言内容とのこと。

総務省の「みんなの公共サイト運用ガイドライン」では、公共的な機関はレベル AA に準拠することが原則となっている。公共交通機関に関してもレベル AA に準拠しているということを全てに対して言う必要があるのではないかと思う。今回の提案を聞いていると、総務省の「みんなの公共サイト運用ガイドライン」よりも、少し軽くしているように感じられるが誤解か。

○特に軽くしているという訳ではなく、レベル A、AA までは取り組むことが望ましい項目を含めて対応を検討するものとの位置づけである。公共交通事業者はウェブアクセシビリティについて特に進んでいるという訳ではないので、最低限としてレベル A は対応していただく提案であり、余裕があればレベル AA まで取り組んでいただく。レベル AA までを目標とした場合は達成できない恐れがあるため、まずは1歩ずつ行うという考え方をしている

これだけ見ると、国交省の担当者は結構現実が見えてるような気がするんですよね。まずはできるところからやる、と。まあもっとはじめの一歩になる項目は絞ってもいい気はしますが。

●東京都や総務省もレベル AA まで準拠することを推奨しており、最低限行うのがレベル AA までであるというスタンスでないと進められない。

総務省の「みんなの公共サイト運用ガイドライン」では、2017 年度末までにレベル AA に準拠するようにとなっているため、目標とするところはレベル AA でなければならない。また、ウェブアクセシビリティとコンテンツの話が混同して整理されていると思う。ここでいうウェブアクセシビリティとは、コンテンツにかかわらず、全てレベル AA に準拠するというのが総務省ガイドラインの概略である。その中で、コンテンツによっては、極めて重要な情報がある。その極めて重要な情報に関してはレベルAAA を目指さないといけないというガイドラインにならないといけない。特に、障害がある人にとって重要な情報が、アクセスできない人を作ってしまうということが問題なのではないかと思う。そのため、この基準についても今後議論していただきたい。また、コンテンツとアクセシビリティの話は分けて議論をする必要があると思っている

いやあこのあたり、本当にどの分野の人が言ってるんでしょうねえ。レベルAA準拠とか真の意味で達成できてる地方公共団体、一体どれだけあるのか。

ガイドラインの改訂案に関わらせていただいたため、特に段階を設けた意図について補足をさせていただきたい。現状、ウェブアクセシビリティに取り組んでいただいている組織もあれば、まだ配慮が至っていない組織もある状況である。そこから、一足飛びにレベル AA まで対応することが難しいため、まずは必須となるレベル A から始めていただく。次に、全てのレベル AA への対応が難しい場合には、まずは交通関係で特に利用が多くなりそうな項目から「目安」として改定案に示した順に沿って進めていただくと良いのではないかということで優先順位付けをした経緯がある。ガイドラインとしてレベル AA を目指していただくことは非常にありがたいが、一方で事業者の負担となってしまって全く進まないという状況を避けたいということもある。最後に、レベル AAA の項目については、コンテンツによって達成できるか、適用する方が良いのかというところの判断が難しい項目であり、一般的な方針としてレベル AAA への適合を要件とすることは推奨されていない。取り入れるところを説明する場合には、具体的に事例を書いて説明をしていかなければならず、アクセシビリティの普及を行っているウェブアクセシビリティ基盤委員会等のサイトを参照して、レベル AAA で取り組むべきことについて事例を見ながら判断して頂くようにすることが望ましいのではないかと思う。

この発言者に謎のエールを送っておきます(何)

●事業者がウェブページを作成する際に、自社で制作しているところは少なく、外注をしているところが多いと思う。その際、外注先に仕様を理解してもらうという考え方で言うと、事業者の負担はそれほど大きくないのではないかと思う。ウェブ業者の中には、アクセシビリティガイドラインがあるにもかかわらず、しかもJISがあるにもかかわらず、それに従うために余計にお金をくださいといっている現状があり、これがすごく変である。そのために、障害がある方達に情報が届いていない。尚且つ、国土交通省がずっと行っているソフトとハードを合わせて問題解決をしていくという考え方からすると、ハードが準備できていないところに関しては、どうしてもソフトで必要な情報を提供しないといけないので、その部分に関してはレベル AAA をちゃんとつけて、必要な情報が必要な人に届くということが、とても重要である。その観点を入れて、ハード・ソフトを充足させるために、このウェブをどのように位置づけていくかという議論にしていく必要性があるのではないかと思う。今後の議論の中では、どういう情報がどういう当事者に伝わらないといけないかという観点で、このガイドラインを考えていただくことも、効果的にガイドラインを普及させていくためには重要である。

「ウェブ業者の中には、アクセシビリティガイドラインがあるにもかかわらず、しかもJISがあるにもかかわらず、それに従うために余計にお金をくださいといっている現状があり、これがすごく変である。」(暗黒微笑)

●ウェブアクセシビリティに取り組まなければならない方々が、まだアクセシビリティについて経験が浅いということを聞いているので、そこをどうやって引き上げていくかということが課題である。そういう意味では、目標についてレベル AA で行っていただき、そしてレベル AAA をいずれ目指すという方向で将来的には考えていただきたい。

レベルAAA皆さん好きですねえ…JIS X 8341-3:2016の「レベル」がなんなのか、というところあたりから検討会の面々に国交省は本当に説明できているのでしょうか。

●ウェブアクセシビリティについて、開発をしている事業者はスキルもあり、経験もあると思うが、実際のユーザーのニーズと使い方を把握しながら進めていただきたいと思う。私がいつも仕事をしている視覚障害の方々を見ると、かなり特殊な、非常にユニークな情報の取り方をしている。絶対に大丈夫だと言われた業者にお願いした結果、そのウェブページの会合後に、すぐに改修を求められたという事例もあるので、是非ユーザーのニーズと使い方を把握して進めてもらいたい。

ユーザーテストをすればなんか出てくると言うことはよくある話では。

●目標として、レベル AA を達成することを目指していただきたい。段階的であったとしても、目標を提示する形のガイドラインの書き方の方が良い。

まあ、レベルAAを目指すというのが潮流っぽいのでそうだといいんでしょうけど、ウェブサイトの運用という視点がことごとく抜けているのはどうしたものですかね。

●今後の進め方については、セミナーが非常に重要で、現在、東京・大阪の 2 回となっているが少なすぎる。全国で、5 ヶ所くらいで開催していただきたい。

ご予算次第では。

●情報の入手については、ウェブサイトのみならず、アプリから行うこともあるが、現在、視覚障害者が満足に使えるアプリがなく、そこからの情報が得られていないのが現状である。ウェブサイトのアクセシビリティというところで、アプリも含めた検討をお願いしたい。

まあアプリも原理的にはウェブサイト似たようなものなはずなんですけど、アプリはアプリで実装という意味でウェブサイトとは別世界ですからね……。

という感じでざっくりと眺めつつ、てきとうなコメントを付けてみましたが、政府の検討会でこの程度のレベルで本当にまともなガイドラインやウェブアクセシビリティ施策ができあがるのでしょうか。頭を抱えるしかない感じではありますが、これが現実と言うことでしょう。

HTML4/5の知識の断絶みたいなものを感じた件。

これはこれである意味で喜ばしいことなのですけれども、こんなことを書いているのはこのへん*1のことを観測した結果といったところです。

件のエントリーについて、ここで中身云々はどうこう言うつもりはなくって、むしろ書いた人がHTML5から入ってきた世代の人だとすると、HTML4のことを調べることがかなり困難な状況になっているのではなかろうかと。HTML5世代というのは@masuP9の推測で、言われてから気づいたわけですけれども、そう考えると確かに腑に落ちるなと。

一面では変にHTML4に引っ張られることがないというプラスの側面があるわけですが、見方を変えると、HTML4/XHTML1でできたレガシーコードを読み解けないとも取れるわけでして、それはそれで困ったことになっている……のかもしれないのかなあって。

しかしまあ、今更HTML4/XHTML1のことを新しい世代に敢えて伝えたいかっていうと、別に積極的には伝えたくないわけでして、そのあたりに矛盾みたいなものを感じなくはない。

まあもやっとした感じで、自分でもすっきりとしたものが見通せているわけでもない、ってところで。

ちなみに

件のエントリーへの回答はブコメにあるとおり。

The W3C Markup Validation Serviceに次のコードを突っ込めばよりわかりやすいでしょうか。

<!DOCTYPE HTML PUBLIC "-//W3C//DTD HTML 4.01//EN" "http://www.w3.org/TR/html4/strict.dtd">
<html>
<title>HTML4 Strict</title>
<img src=hoge alt="">
<!DOCTYPE html PUBLIC "-//W3C//DTD HTML 4.01 Transitional//EN" "http://www.w3.org/TR/html4/loose.dtd">
<html>
<title>HTML4 Transitional</title>
<img src=hoge alt="">

*1:https://b.hatena.ne.jp/entry/s/blog.mayo31.info/archives/2321 こう書いている時点でいろいろお察しください