2019年度冬期色彩検定UC級を受けた話~どうやら合格したらしい

2019年度冬期色彩検定のUC級を11月10日に受検してて、今週のウェブ合格発表を見たところ、どうやら合格していたという話。

UC級は公式サイト曰く色のユニバーサルデザインのことを指しているみたい(公式のUC級 とはも参照)。

色彩検定自体はツイッターのTLでチラッと見かけて、ああこういうのもあるんだなあ程度の認識だったり。一応ウェブアクセシビリティ界隈の隅っこにいる人間として、受けてみるのも一興かなあと言うことで受けてみた、というのが動機だった模様。検定内容は上記公式サイトにあるとおり、

  • 色が見えるしくみ
  • ユニバーサルデザイン
  • 色覚の多様性
  • 高齢者の見え方
  • 色覚の多様性や高齢者に配慮した配色方法(配色の改善例)

といったあたり。試験の勉強自体は過去問題集(といっても、試験1回分しかない)を前日に通しで解いて、当日の試験会場で軽く見返すというある種のやる気が崩壊状態だったのだけれども、過去問を解いてて思ったのは「高齢者の見え方」というのがこの検定独特かなあと言う雑感。

色彩検定過去問題集2018年度UC級

色彩検定過去問題集2018年度UC級

白内障緑内障をはじめとする、主に加齢に伴う眼の疾患と具体的な症状を直前におさえておくことができたのがよかった(真面目に受検する人はもっと早くから勉強しましょう)。

というようなロクに準備をしてなかったこともあってツイッター上ではステルス受検だったのだけれども、自分のTLではちらほら受検している人を見かけたので、存外界隈(?)では受検した人がいたのかもしれない。

とはいえ色彩方面の知識がゼロの状態で受検したというわけでもないので、今までどんな本や資料を読んで知識を得ていただのかを軽く紹介。これから受けてみようと思った人とか、色に興味があるけれども何から手を付けていいのかわからないという人の参考になればこれ幸い。


徹底図解 色のしくみ―初期の光学理論から色彩心理学・民族の色彩まで (カラー版徹底図解)

徹底図解 色のしくみ―初期の光学理論から色彩心理学・民族の色彩まで (カラー版徹底図解)

  • 作者:城 一夫
  • 出版社/メーカー: 新星出版社
  • 発売日: 2009/03/01
  • メディア: 単行本

図解雑学的な書籍。今見返してみると、ニュートンゲーテの話から、マンセル表色系、PCCS、L*a*b*表色系、加法・減法混色、色彩調和論…などが羅列されていて、UC級じゃない方の色彩検定にもある程度使えるのかもしれない。

色彩学の基礎

色彩学の基礎

  • 作者:山中 俊夫
  • 出版社/メーカー: 文化書房博文社
  • 発売日: 1997/04
  • メディア: 単行本

著者による大学の講義録をまとめた教科書。読んだというよりかは積んでいるといった方が正しいかもしれない。雑学的な書籍ではわからない、学術的な事項はほぼ解決できるはず。自分が類似の教科書を探したときでは一番しっくりきた感じ。初版が1997年なので今からすると古いのが少しネックではある(後述の医学用語が整理される前の用語を記述している箇所がある)。今探せばもう少し新しくてよい教科書があるかもしれない。

WCAG 2.0解説書の翻訳見直しで参照していたものの一部。1型2色覚とか単独で書かれると一瞬うろたえてしまうけれども、試験自体は文章の穴埋めなので、そこから類推することもできる(真面目に書いておくと、1型2色覚はL錐体が一切機能していない状態なので、赤色を認識できない状態)。ウェブ屋さんはsRGBに慣れているはずなので、この順番でどの錐体の機能に異常がある色覚異常にあたるのかを落ち着いて紙に書いていけば間違えることはないはず。

とまあざっくりこんな感じ。なんかハードルを上げている気もするけれども、明らかにオーバーキルなところがあるのは否めない感じが。

今年も月1ペースでブログを書けてよかった(よかった)。少し早いけれども、今年もありがとうございました。

手話の話を枕に、例の国交省検討会の議事概要から

先月のBlogエントリーの続き的な。

提案されたウェブアクセシビリティの考え方について、レベル「AAA」は、必要な取り組みの対象として「望ましい」という意味での書きぶりとなっているが、「速やかに対応する」という考え方が必要だと考えている。聴覚障碍者バリアフリーを考えた場合は、字幕のみならず、手話も非常に重要な要素となっている。権利条約第 9 条に掲げられているアクセシビリティの考え方には、差別の禁止、会場等の整備、合理的配慮の3点を求めている記述がある。ウェブサイトによる情報提供の考え方では、レベル「AA」である字幕が対象(準拠)となっているが、レベル「AAA」である手話については対象となっていない。最近は手話の動画を加えるホームページが増えつつあり、手話コンテンツの制作は、大きな負担ではないと思っている。そういう意味から、レベル「AAA」ではあるが、手話についても「速やかに対応」するようにしていただきたい。

令和元年度第2回「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準等検討会」議事概要より

とまあ、例の国交省検討会の議事概要が今週になってようやく出てきた、というか駅における車椅子使用者が単独乗降可能なプラットホームの整備やウェブアクセシビリティの確保を推進します!~公共交通機関のバリアフリー整備ガイドラインを改訂~のプレスリリースより後に出てきたというのがまたなんとも。議事概要の中身は中身でさっくり読んだところが上記の引用で面食らったわけですが、まあ、概要なので、元発言がどういうふうになっていたのかまではわからないわけなんですけれども……。

  • 聴覚障害者にとって手話が重要な要素というのは、キャプションが第二言語という人もいるとWCAG 2.0解説書の達成基準 1.2.6 を理解するにもあるとおり。
  • 「最近は手話の動画を加えるホームページが増えつつあり」というのはどのウェブページを指してそう言っているのでしょうか。具体的なウェブページを伺いたいところ。
  • 「手話コンテンツの制作は、大きな負担ではないと思っている。」世の中の大半のコンテンツには手話通訳が存在していないわけで、それはやはりコストの問題があるからに他ならないのでは。
    • ウェブアクセシビリティが考慮されていない交通事業者のウェブサイトも残念ながら散見される中、直ちに手話というところまで行き着くかというと、厳しいですが現実味に欠けていると思うんですよね…。仮に動画あったときに、手話以前にキャプションすらないと思うんですが、それをすっ飛ばして手話を用意せよ、とも取ろうと思えば取れますが真意や如何に。

まあ第1回のときもそうだったんですけれども、やたらと高いレベルを設定したがるのは非常に残念といいますか。第1回での国交省からのできるところから取り組むみたいな姿勢は個人的には好感が持てたんですけれども、結局求めるところは総務省ガイドラインと同等以上みたいなものになってしまったわけで(改定されたガイドラインのウェブアクセシビリティに関するもの)。

ついでにこれは個人的な勝手な想像の産物なのですけれども、もし仮に国交省ガイドラインがレベルAAを目指すのではなく、当初に提示されていた改訂(案)のようにレベルAとAAで取り組めるところから取り組みましょう、となっていた場合に、交通事業者でない一般の事業者が、総務省ガイドラインより簡単にできそうな、国交省ガイドラインを参考に取り組んでみよう、みたいなこれからウェブアクセシビリティに取り組んでいく足がかりになった可能性もあったわけじゃないですか。まあ、それを障害当事者の方々は是としなかったようなので、残念ですねみたいな(知らんけど)。

ところで少し古い話で、ウェブアクセシビリティの祭典なんかで神戸市の取り組みとか聞く機会がありましたけれども、熱心に取り組んでいるにもかかわらず、(過去のコンテンツに問題があることも相まって)実際にはレベルA一部準拠が精一杯なところ、という実情もあったりするわけで。(参考:神戸市:神戸市ウェブアクセシビリティ方針の対象範囲外となるウェブページの一覧及び今後の対応と考え方)とまあ、政令市でこういう現状があるわけなんですよね。

皆さん、というか障害当事者の方々が真に求めているウェブサイトは、WCAGに適合なり準拠なりが宣言されたウェブサイトではなくて、情報が問題なく取得できるウェブサイトだと思ったりしましたが、はてさて。