「やさしい日本語」のお焚き上げ

誰だったか「やさしい日本語」についてツイートしていたので、いろいろと調べていたら、ひつじ書房ウェブマガジン「未草」というサイトで「やさしい日本語」は在留外国人にとって「やさしい」のか?というドンピシャな連載があったのでいろいろ書けるかな…と思ったんですけど、この連載が結構な長編なのと、論説というよりかはエッセイテイストなのでまとめきれませんでしたみたいな()。

全体をとおして、アクセシビリティガイドラインとの対比で言うと、WCAG2 SC 3.1.5 読解レベルと対比してどうなのか?といったところでしょうか。「やさしい日本語」は、果たして通常の日本語の代替コンテンツになっているのか?というのはアクセシビリティの観点から興味深いと思っており、このあたりは第10回 在留外国人に対する言語政策1:多言語表示と通訳と機械翻訳みたいなところとも絡んできており、特にウェブコンテンツとして「やさしい日本語」を作るくらいなら、機械翻訳フレンドリーなコンテンツを作るほうがよっぽど有意義ではないのか?とか思ったりはします。

この連載で個人的に一番面白いのは第5回 「やさしい日本語」の漢語と漢字のルビでルビについてあれやこれや書かれているわけですけども、

ルビを打つとやさしくなるのかという問題は賛否両論があり、結論が出ていないというのが現状であろう。

という感じで、まあルビの効果ってよくわかんないよねっていうところですね。個人的な疑問としては、ルビ自体が実はあまり腑分けされてないんじゃないのか?というはあったりしますけども。WCAG2で言うならSC 3.1.6 発音との絡みというところですね。

あとは、第4回 「やさしい日本語」の専門用語みたいなのはありますが、SC 3.1.3 一般的ではない用語なんかと対比して考えると、一般的な名詞をわざわざ言い換えるのは余計なお世話なのでは、みたいなところはありますね。

最後に、「やさしい日本語」自体かなり雑な体系であることが見て取れるかなあと思います。まあ鵜呑みにしちゃあまずいですよねみたいな感じで。

「デジタル社会の実現に向けた重点計画」メモ書き

「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定しました |デジタル庁(準備中)

例によって例のごとく、アクセシビリティ関連を拾い上げてみました。干シタル庁とか揶揄されてますがまあさておき、デジタル庁が発足するからって情報アクセシビリティ施策が急に変わるとは思えないよねっていう。

あとはまあ、以下は本文からの抜粋なんですけど、それとは別に、たぶんPowerPointをPDF化した参考資料のデジタル社会の実現に向けた重点計画<概要>なんか見ると、如何にWebアクセシビリティの優先順位が低いかがわかるのでうんたらかんたら(知ってた)。


世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画の変更について(令和3年6月18日 閣議決定

官民データ活用推進基本法平成28年法律第103号)第8条第7項の規定に基づき、世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画(令和2年7月17日閣議決定)の全部を別冊のとおり変更する。

第1部 我が国が目指すデジタル社会と推進体制

2.デジタル社会の形成に向けたトータルデザインと推進体制

(1)デジタル社会の形成に向けたトータルデザイン

③ 包括的データ戦略

さらに、こうした施策や取組を進めていく上では、全ての国民が情報通信技術の恵沢を享受できる社会の実現に向けて、地理的な制約、年齢、障害の有無等の心身の状態、経済的な状況その他の要因に基づく高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用に係る機会又は必要な能力における格差(デジタルデバイド)が生じないよう、アクセシビリティを確保することにより、「誰一人取り残さない」デジタル社会の実現に向けた対応をきめ細かく、丁寧に行っていくことが不可欠である。


第2部 デジタル社会の形成に向けた基本的な施策

2.徹底した UI・UX の改善と国民向けサービスの実現

(4)情報システム整備方針の策定と一元的なプロジェクト管理の実施等

デジタル庁は、デジタル庁設置法第4条第2項第 15 号25に基づき、国・地方公共団体独立行政法人・公共分野の民間事業者等の情報システムの整備及び管理について、情報システム整備方針を策定し、情報システム整備等の基本的な考え方等(費用対効果の精査、クラウドサービスの利用、アクセシビリティの確保等)や、デジタル社会の共通機能の要件等(ガバメントクラウド、ガバメントネットワーク、ID・認証機能等の活用、データ連携のための標準仕様等)を提示する。

(中略)

なお、デジタル社会の形成に係る調査研究、実証、交付金等の予算(国の行政機関の情報システムの整備及び管理に向けたものを除く。)に関しては、デジタル庁が重要と判断するものについて、要求時や執行段階に重点計画に沿った内容であるか評価・検証を行う枠組みを令和3年度(2021 年度)中に検討する。令和4年度(2022 年度)予算要求については、必要に応じ、準公共分野及び相互連携分野に係るものなど、デジタル庁が重要と判断するものについて、本計画に沿った内容であるか評価・検証を実施する。


6.アクセシビリティの確保

「誰一人取り残さない」デジタル化を進めていく上では、デジタルデバイドの着実な是正を図っていかなければならない。そのためには、ユニバーサルデザインの考え方、すなわち、デジタル機器をそもそも有していない方への行政サービスの提供や、デジタル機器に不慣れな方でも容易に操作できる UI の設計、外国人利用者向けの申請画面等の多言語化など、利用者目線で、かつ、利用者に優しい行政サービスを実現することが重要である。

このような観点から、アクセシビリティの確保(地理的な制約、年齢、障害の有無等の心身の状態、経済的な状況その他の要因に基づく高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用に係る機会又は必要な能力における格差の是正)1を通じて、誰もが公平・安心・有用な情報にアクセスし、デジタル化の恩恵を享受できる環境の整備を図るため、次の取組を推進するとともに、民間事業者が自ら積極的に必要な取組を行うよう促進する。

(1)情報通信ネットワークの整備の支援

(中略)

(2)情報バリアフリー環境の実現

障害者や高齢者を含む、誰もがデジタルによる恩恵を享受できる情報バリアフリー環境の実現に向けて、聴覚障害者向け会議支援システムのような利便の増進に資する情報通信機器・サービスの研究開発の推進及びその普及を図る。

国・地方公共団体等の公的機関のウェブアクセシビリティの確保・向上の取組促進を図る。

また、企業・障害者等の状況にきめ細やかに対応可能な ICT 機器・サービスの開発に当たって、障害者向け ICT 機器・サービスの開発に資する情報の収集・共有のための関連情報のデータベースの利用促進を図る。

企業等が開発する ICT 機器・サービスが情報アクセシビリティ基準に適合しているかどうか自己評価する仕組み(「日本版 VPAT」)等について、普及展開を図る。

視覚障害者等が電子書籍を利用するための端末機器等について、研究開発の推進や端末機器等の導入支援を行う。

放送事業者等に対し、字幕番組、解説番組、手話番組等の制作費や生放送番組に対する字幕付与設備の整備費を一部助成することにより、視聴覚障害者向けテレビジョン放送の充実を図り、放送を通じた情報アクセス機会の均等化を実現する。

(3)ICT 機器・サービスに関する相談体制等の充実

障害者や高齢者が、身近な場所で身近な人から ICT 機器・サービスの利用方法を学ぶことができる環境作りを推進する「デジタル活用支援」について重点的に取り組む2。令和3年度(2021 年度)は全国の携帯ショップや地域の ICT 企業、社会福祉協議会、シルバー人材センター、公民館など約 1,800 箇所での講習会等の実施が予定されているが、令和4年度(2022 年度)以降については内容の充実を図り、これらを起点として地方公共団体教育機関等と連携し、地域のサポート体制を確立することにより、幅広い取組を国民運動として促進する。

(中略)

障害者に対する ICT 機器の紹介・貸出・利用に係る相談等を行う総合的なサービス拠点(サポートセンター)の設置や、サピエ3などの障害者がアクセスしやすいネットワークを通じたサービスの利活用、ICT 機器の操作支援を行うパソコンボランティアの養成・派遣などの取組を支援する。

(以下略。以降は見出しのみ記載)

(4)経済的事情等に基づく格差の是正

(5)「言葉の壁」の克服

(6)中小企業のデジタル化の支援

(7)市区町村等における国民のアクセスポイントの確保


第3部 施策集

VII.アクセシビリティの確保

[No.7-5] 情報アクセシビリティ確保のための環境整備

・ IoTやAIの社会実装が進むためには、ICT機器・サービスのアクセシビリティの確保が必要となる。米国やEUでは、法律によりICT機器・サービスのアクセシビリティ基準を規定し、それを企業が自己評価する仕組みが提供されている。

・ このため、米国・EUの基準に加え、各業界団体が独自に規定したアクセシビリティ基準を基礎に、我が国において各企業が自己評価するための様式や公表の仕組みを策定する。あわせて、政府情報システムの調達時にも活用する方策を検討。

・ これにより、企業によるアクセシビリティ基準に関する情報公開が進むことで、基準を満たすICT機器・サービスの展開を促進。

KPI(進捗): ICT機器・サービスのアクセシビリティ確保に関する自己診断・開示の仕組みの構築・導入に向けた検討状況

KPI(効果): ICT機器・サービスのアクセシビリティ確保に関する自己診断・開示の仕組みの利用数

(令和8年度(2026年度)まで100以上)

吹き荒れる日本版VPATの嵐(謎)

[No.7-6] Webアクセシビリティ確保のための環境整備等

・ 高齢者や障害者など、ICTの恩恵を十分に享受できていない者が多く存在。

・ 誰もが行政等のWebサイトを利用しやすいようにするため、令和2年度(2020年度)の調査結果を踏まえ更なる公的機関Webサイトのアクセシビリティ状況改善に向けた取組を促進。また、高齢者や障害者等に配慮した事業者による通信・放送サービスの充実を図るため、事業者等への助成を行い、助成後5年間の提供状況を確認。

・ これにより、デジタルデバイドを解消し、誰もがICTの恩恵を享受できる情報バリアフリー環境を実現。

KPI(進捗): ・ サービス及び研究開発に対する助成件数

・ JIS規格準拠に係る各公的機関への説明会回数(令和3年(2021年)3件)

KPI(効果): ・ 民間事業者向け「身体障害者向け通信・放送役務の提供・開発等の推進」助成終了後2年経過時の事業継続率(令和3年(2021年)70%)

・ ホームページのJIS X 8341-3への準拠を表明している地方公共団体の割合(令和3年(2021年)77%)

これ以前から謎なんですけど、「Webサイトのアクセシビリティ」と「高齢者や障害者等に配慮した事業者による通信・放送サービス」が同じカテゴリーになっているの本当に解せないんですよね…。


  1. デジタル社会形成基本法第8条(利用の機会等の格差の是正)、第 23 条(高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用の機会の確保)及び第 24 条(教育及び学習の振興)等

  2. 総務省において、「デジタル活用支援 令和3年度事業実施計画等」を公表(令和3年5月 18 日総務省)。

  3. 視覚障害者情報総合ネットワーク。