(メモ)くだんのアクセシビリティアナリストは伊敷氏が勤めるということに

本人談。

サニーバンクの伊敷政英アドバイザーが、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室アクセシビリティアナリストに就任いたしました |トピックス | サニーバンク 障害者専門 クラウドソーシングサービス

ガチャはやってみなければわからないわけですが、こういう結果でしたと。

どうかお身体に気をつけていただければと。

(メモ)バリアフリーが和製英語かどうかを少し調べてみた話。

言葉を正さなくては誰一人取り残さないデジタル社会を実現できない - 村田 真 (Makoto Murata) - 情報アクセシビリティについてのブログ - researchmap

バリアフリーアクセシビリティは違うのか同じなのか?前者は和製英語で、後者は国際的に用いられる用語である。おそらく、アクセシビリティでは意味が分からないと考えた人がバリアフリーという語を作ったのだろうと想像する。しかし、アクセシビリティという語がよく使われるようになってみると、二つの言葉があることは問題になる。同じなのか違うのか?私にはよく分からない。

まず和製英語がなんぞやと言うことを明らかにしておくと、新明解第八版によれば「英語として通用するだろうという推測の下に日本人が用いた英語らしい単語で、実際には英米人には通用しないもの」ということになっている。では、日本人が用いた英語らしい単語で、かつ、本当に英米人には通用しないのか。“その謎を解明するため、我々調査隊はアマゾンの奥地へと向かった――。”

ISO/IEC Guide 71:2014(JIS Z 8071:2017)では、

2.18 universal design

design of products, environments, programmes and services to be usable by all people, to the greatest extent possible, without the need for adaptation or specialized design

Note 1 to entry: Universal design shall not exclude assistive devices for particular groups or persons with disabilities where this is needed.

Note 2 to entry: Terms such as universal design, accessible design, design for all, barrier-free design, inclusive design and transgenerational design are often used interchangeably with the same meaning.

[SOURCE: United Nations Convention on the Rights of Persons with Disabilities, Art. 2, modified — Note 2 has been added]

注記2として、「アクセシブルデザイン,(中略)バリアフリーデザイン(中略)などの用語は,同じ意味で互換的に使用されることが多い。」とISOにもバリアフリーという単語はしれっと記載されていて、アクセシビリティバリアフリーはとりあえず似たものと言うことになっているようである。

ただし、「ISO/IEC ガイド71人間工学技術資料集」の制定という産総研のリソースでは、ISO/IEC Guide 71が日本提案と言うことが述べられており、日本が提案したからこそbarrier-freeという単語が入ったのかもしれない。

日本におけるバリアフリーの歴史1という記事では、『1974年はまた,国連障害者生活環境専門家会議(United Nations Expert Group Meeting on Barrier-free Design)が開催され,「バリアフリーデザイン」が世界に発信された年でもある』と言う記述がある。約50年前にはひっそりと国連の会議名だったり、報告書のタイトルだったりにはなっている、と。

冒頭の元記事でNDLの「EU のアクセシビリティ指令」が紹介されていて、『「アクセシビリティ(accessibility)」とは、障害のある人が、他の者との平等を基礎として(on an equal basis with others)、物理的環境、輸送機関、情報通信及びその他の施設・サービスを利用できることをいう (1)。』とあるのだけれども、この(1)の脚注では、

(1) European Commission, “European Disability Strategy 2010-2020: A Renewed Commitment to a Barrier-Free Europe,” COM(2010) 636 final, 2010.11.15, p.5. https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:52010DC0636&from=EN (以下略)

と言った塩梅でbarrier-freeという単語が使われている。ただし本文では2箇所に留まっており、うち1箇所は

The Commission will work together with the Member States to tackle the obstacles to a barrier-free Europe, taking up recent European Parliament and Council resolutions.

という文言になっている。Weblioではobstacleは「人・ものの進行や進歩を妨害するもの」ということなので、移動(建築物)を対象に言及している…のだろう。


ここまでわりと公的と思えるものをさぐってみた。一方でぐぐってウェブページを拾い読みしてみると、

Barrier-freeは英語?、和製英語? - EnglistA [イングリスタ] | 英語が話せるとちょっとハッピー。というページでは、

バリアフリーという日本語はよく目にしたり耳にしたりします。英語で書きますとBarrier-freeとなります。しかしこの日本語のバリアフリーと英語のBarrier-freeとは少し意味合いが違うようです。ジャパンタイムズの記事を読みながら、それぞれの意味するところを探ってみたいと思います。

(中略)

こう見てきますと、英語の barrier-free は具体的には段差を解消し車椅子での通行が可能となること、そして車椅子での交通機関の利用ができるようになるということを意味していることが分かります。

と言うようなことが書いてある。

バリアフリー(barrier-free)の意味を英語で考える | ネイティブと英語について話したことというページでは、

バリアフリー(barrier-free)という用語は完全な和製英語ではありませんが、日本や他のいくつかの非英語圏の国でのみ使われている用語だといえます。英語では段差をなくしたり、誰にでも使いやすくする手法などは日常会話においては「accessible」などを使って表現されます。

またこのページでは英語版Wikipediaの記事にも触れており、このページによるWikipediaの翻訳では

バリアーフリーの建物の改造とは、建物や施設を身体に障害のある人々に使われるようにするために改良することである。この用語は主に日本と非英語圏の国々(ドイツ、フィンランドなど)で使われており、英語圏の国では「accessibility」や「handicapped accessible」などが日常生活においては支配的である。

ということが書いている。


ざっくり調べた限りでは、barrier-freeという単語が存在しないわけではない一方で、元々英語圏で使われていたbarrier-freeという言葉と、日本で広く使われているだろうバリアフリーというカタカナ語と比べると、カタカナ語のほうがより広いものを対象にしている印象を受けた2。その意味では完全に和製英語であると断言するところまではいかないのではないか、というのが個人の感想。ただし元記事の冒頭に、

アクセシビリティに関する用語の混乱は、日本に大きな悪影響を与えていると思う。

については、昔から(?)バリアフリーで起きていて、そしてアクセシビリティでも起きつつある(というか指摘のとおり既に起きている)。思い返せばアクセシビリティアナリスト - 中途採用|デジタル庁創設に向けた準備サイトで職種がUX/UIというくくりにされていたことからして、既にユーザビリティ方面とごちゃ混ぜになっていたのだろう。悲観的に捉えると、デジタル庁がアクセシビリティを阻害する…のかもしれない。

ところで今日で6月はおしまいで、明日から7月だったりする。6月31日…というネットスラングめいたネタはさておき、前述のアクセシビリティアナリストが早ければ明日に採用されるということになる。昨今のデジタル庁の話題からして大きな期待はしないことにしているので、続きを読むにはわっふるわっふる(結局ネットスラングで締めざるを得なかった…)。


  1. 高橋儀平. 日本におけるバリアフリーの歴史. 日本義肢装具学会誌. 2020, vol.36, no.1, p.62-67. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspo/36/1/36_62/_pdf, (参照 2021-06-29).

  2. これを書き上げてから気づいたけど、新明解第八版だとバリアフリーは「高齢者や障害者が安全で快適な生活ができるように、階段や段差など障害となるものをなくすこと。」とあり、国語辞書と比較しても拡大解釈されていると言えるかもしれない。