CSUN 2022レポートの読後メモ的な

関根さんの2022年度CSUNレポート | 株式会社ユーディット(情報のユニバーサルデザイン研究所)をざっくりと読んだので自分用メモを。


3月13日 USに到着

アコモデーションとは、本来、このような好みやニーズに合わせた適切な環境の整備や提供を指す言葉だ。日本で「Reasonable Accommodation」を「合理的配慮」と、まるで障害者への恩恵のように訳したのは、なんだか残念な誤訳に思える。明らかに、その人に合わせた「適切な調整」だと思うのだが。他にも残念な例は多い。障害者権利条約の第9条「アクセシビリティ」を、「利用のし易さ」と外務省が意図的に誤訳?して、まるでユーザビリティみたいに変化させてしまい、その後、どんどん国連からアクセシビリティに関する追加修正が出たものの、対応できなくなっている日本の状況を思い出す。ユニバーサルデザインを構成する二つの概念のうち「アクセシビリティ」は「使えるかどうか」で、「ユーザビリティ」は「使いやすいかどうか」である。ともにISOでも明確に定義された概念規定なのに、どうして第9条はこうなってしまったのだろう。

合理的配慮については、条約の第2条にあって正文と外務省訳はこんな感じになっていて、言葉自体がしっくりこないのは前から感じてて、改めていわれてみれば首をかしげたくなりますよね。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_000900.html#section3

“Reasonable accommodation” means necessary and appropriate modification and adjustments not imposing a disproportionate or undue burden, where needed in a particular case, to ensure to persons with disabilities the enjoyment or exercise on an equal basis with others of all human rights and fundamental freedoms;

https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_000899.html#section3

「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。

アクセシビリティを利用しやすさのように言い換えているのは、国立国語研究所「外来語」言い換え提案が先じゃないかしら。アクセシビリティー。まあどうなのよ的なものは。

「国連から」のくだりは、我が国が2014年に条約を批准して5年経ったときに提出された、第1回政府報告の前後の話だろうか。

ISOでは、というのはISO/IEC Guide 71:2001/JIS Z 8071:2003(当時。現在はISO/IEC Guide 71:2014/JIS Z 8071:2017)のことかな、とは思うけれども。まあ技術的な言葉が法令に入らない風潮とかあったりする(?)のかしら(「乙4」でおなじみの?危険物方面はめちゃくちゃ技術よりだと思ってますけど)。


3月15日 セッション始まる キーノート NASA IBM アイボ

まずNASAのセッションに行った。元気なお姉さんBetsy Sirkは、NASAのITマネジャーで、アクセシビリティの専門家だ。連邦政府のCIOカウンシルには、アクセシビリティのチームがあり、彼女はそのリーダーを長く務めているそうだ。公的機関は、アクセシブルなICT機器やソフト、アプリ以外は、購入してはならない。これは最初86年に制定され、何度も改正されてきた米国リハビリテーション法508条の基本原則である。これを守れないIT企業は、入札にすら参加できない。そのために、省庁側がIT企業を教育するのである!入札してくる企業に対し、リハ法508条の内容を伝え、UD調達を円滑に進める役割である。かつてはDOD(防衛省)やDOJ(法務省)が、このようなセッションを定期的に開催しており、その報告をCSUNで聞くことが多かったのだが、NASAの彼女たちも息の長い活動をしているのだ。

果たして我が国で省庁が企業を教導(?)できる体制にあるのかというとそこはかとなく謎ですわね…デジタル庁にそういうことを担ってほしさはあるけれども、手が回ってないっぽいので。

大統領令も何度か出され、政府の公共調達をUDのみにするという方針は、欧米では当たり前、前提となっている。EUには508条と同様のEAA(European Accessibility Act)があり、各国はそれに合わせて国内法の制定が求められる。今回のNASAの発表でも、この連邦政府のチームは、何がUDかを企業に指導し、調達基準書の書き方まで教えてくれていた。企業は当然ながら買ってもらえるよう、全ての製品をUDでしか作らなくなり、それは高齢社会のITインフラ自体をUDにすることに大きく貢献するのである。実に賢い方法だと思うのだが、日本にはこの法律は影も形もない。

デジタル活用共生社会実現会議の流れで引き続き、厚労省総務省は取り組んでいるようで、2021年8月から9月にかけて、石川先生、山田先生、浅川氏、松森氏を招いて障害者にやさしいICT機器等の普及に関する勉強会|厚生労働省というものを行っていたようで(このメモをまとめててはじめて気づいた)。

そういう流れを汲んで、筆者からすると(CSUNの後に)突如として出てきた今年4月の「情報アクセシビリティー・コミュニケーション保障法案」につながっているのではなかろうか…と(「情報アクセシビリティー・コミュニケーション保障法案」参院厚生委編)。


3月16日 デジタルアクセシビリティ ハーバード大学 MacのKIOSK SONY

ハーバード大学が、ADA法違反で訴えられたのは、業界では有名なことだ。

恥ずかしながら知らなかったわけですが、あらましとしてはThe Significance of Harvard’s Settlement on Video Accessibility | National Deaf Centerがまとまっている感じかしら。


3月17日 デジタルアクセシビリティ 法律 盲ろう メディア XR

Covid19の情報を出すWebサイトはもちろんだが、医療などの分野も公共情報として、アクセシビリティが必須なのだ。海外ではKIOSKと一般化して呼ばれるが、今回、このKIOSK系のUDに関する発表がとても増えているのが目立つ。薬局や病院、書店や飲食店の情報端末も、すべて508条の対象だ。アクセシビリティは必須なのである。

いろんなところのアクセシビリティというのはキーポイントになりそうですわね。

またこの日は、メンタルの障害当事者が自ら語るセッションもあった。会場は満杯だった。彼は発達障害精神障害を併せ持つエンジニアだ。ただ、日本の障害ジャンルはむしろ世界の中では特殊なので、この言い方はここでは正しくないかもしれない。彼はUXの専門家で、WCAGの中のCOGAと言われるタスクフォースのメンバーである。COGAとは、Cognitive and Learning Disabilities Accessibilityの略で、認知・学習障害アクセシビリティに関する研究チームだ。このジャンルのデジタルアクセシビリティは欧米でもまだ始まったばかり

ジャンルが特殊、というのは筆者は詳しいことを知らないので、そういうものなのかしらね…。ただ、さくっとW3C Coga TFの出しているCognitive Accessibility User Researchを以前に斜め読みした身としては、ICD-10あたりとのマッピング(それは障害の医学モデルであって社会モデルではなかろう、という怒られがありそうだけれども、とはいえ医学的知識はある程度必要でしょう?という認識)は必要だよなあ、とは。

また、IBMとPEAT、アクセンチュアなどが働く場所のXRについて発表したセッションも面白かった。XRとはVRVirtual Reality)、AR(Augmented Reality)、MR(Mixed Reality)の総称だ。

XRのアクセシビリティについては、W3C APA WGXR Accessibility User Requirementsなるものを出しており、そこから必要とされるだろうものがいろいろと書いてある(リサーチ段階だと思っている)。斜め読みした感じでは、概ねWCAG 2の延長ではなかろうかというイメージで、XRという新しいジャンルではあるけれども、まったく違った観点からの取り組みにはならないという理解。


3月18日 メディアと障害者 ADA 米国司法省の取組

いろいろな刺激になる内容なのだけれども、

CSUNに来て毎回感じるこのフラストレーションは、技術はあるのに環境を変えようとしない、日本全体の制度設計の不備に対するものである。

という我が国の制度設計の不備というのは、少なくとも情報分野のアクセシビリティに関しては筆者も強く感じているところで、WCAG2視点で1つの技術体系だろうものが、バラバラに動いているようにしか見えないところではあり。少なくとも、ウェブと、電子書籍や字幕放送がWCAGから見れば同じ体系にあるものだよね、というのが果たして我が国の行政側に見えているのか…。


CSUN2022の総括 デジタルアクセシビリティ リーダーシップ メンタル系 DX

確かに欧米と比較して、いろいろと足りないものはあると思うのだけれども、ひるがえって海の向こうのウェブアクセシビリティがちゃんとやれているのかというと、

あたりを見るにつけ、自動テストでボコボコに引っかかるので安心して欲しい(いや安心しちゃいけないんだけども)。持続的に取り組んでいくことが肝要だと思うので、海外に追いつけ追い越せというのも必要な一方で、足元でやれることをやっていくというのも当然必要になってくると。

なんにせよ、トップダウン的な動きと、ボトムアップ的な動きの両方がないとウェブアクセシビリティは進まないわけで。目下の我が国のトップダウン的な動きは流石に読後メモから大きく離れるので別にまとめよ…。

「情報アクセシビリティー・コミュニケーション保障法案」参院厚生委編

「情報分野のバリアフリ-」新法、国会成立へ 超党派議連が当事者の声聞き法案に 参院厚生委で可決:東京新聞 TOKYO Web

こういう動きってどうすれば事前に観測できるんですか2022

第208回国会 参議院 厚生労働委員会 第8号 令和4年4月12日(抄)

第208回国会 参議院 厚生労働委員会 第8号 令和4年4月12日

022 福島みずほ

福島みずほ君 今回、情報アクセシビリティー・コミュニケーション保障法案の議論になりますが、手話言語法を作りたい、手話言語法が是非必要だという声を全日本ろうあ連盟や様々な人たちからお聞きをしております。
 手話言語の重要性からすると、手話言語法の制定によって手話言語教育も充実することができます。厚労省、いかがでしょうか。

023 難波健太

○政府参考人(難波健太君) お答えいたします。
 共生社会の実現に向けまして、障害のある方が社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加するために必要とする情報を取得、利用されることや、あるいは円滑に意思疎通を図ることができるよう障害のある方による情報の取得、利用、意思疎通に係る施策を総合的に推進するということは、大変重要であると考えているところでございます。
 また、なお、学校教育におきましてですけれども、その障害の状態などに応じまして、音声、文字、手話、指文字など、適切なコミュニケーション手段を選択して使用できるよう、きめ細かい教育を行うということが重要でございまして、そのことを特別支援学校学習指導要領に記載するとともに、研修の充実も促進していると内閣府においては承知をしているところでございます。

033 田村まみ

○田村まみ君
(中略)
 次に、情報アクセシビリティー法の方に、念頭に私も幾つかお伺いしたいと思います。
 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項や、国の行政機関、他方、公共団体及び民間事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置などについて定めることによって、全ての国民の人たちが、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現につなげるということを目的にして、障害者差別解消法、制定されました、二〇一六年に。
 それで、その法律を基に合理的配慮というようなことをガイドラインで定めたり、対応要綱、対応指針など、様々これまでも取組をしてきましたし、近年だと、遠隔手話サービスや電話リレーなど、様々な法律も作られて支援が進んできているというような認識もある一方で、改めて今回、この障害者情報アクセシビリティー法を今回提出しなければいけないといったところになるということですね。
 ここで実際にお伺いしたいのが、具体的に本当に何が変わるんだというのが率直な疑問です。一つ私も声としていただいているのが、民間の企業の皆様、障害者雇用にしっかり取り組んでいる皆様が、これで、じゃ次、何が変わるんですかと、私たち何すればいいんですかというようなことを質問としていただいています。
 特に民間企業で、今回の法の第五条にも書かれていますけれども、具体的に何か取り組まなければいけないことが大きく変わるのか、そのことについて御説明ください。

034 難波健太

○政府参考人(難波健太君) 法律が成立した場合には、共生社会の実現に向けて、障害のある方が社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加するために必要とする情報を取得、利用すること、また、円滑に意思疎通を図ることができるよう、障害のある方による情報の取得、利用、意思疎通に係る施策をより一層総合的に推進することとなると考えております。
 法案によりますと、第五条では、事業者が事業活動を行うに当たり、障害者がその必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができるようにするよう努めるとするなどの事業者の責務、また、第七条に、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策が効率的かつ効果的に推進されるよう、国、地方公共団体、事業者等における相互の連携及び協力に努めること、また、十一条第三項には、関係省庁と障害者による情報取得等に資する機器を開発し又は提供する者と障害者などとの協議の場の設置などが規定されているものと承知をしているところでございます。
 法案が成立した場合には、このような法律の規定を踏まえ、事業者においても様々な取組が進むことが期待されるものと考えているところでございます。

036 倉林明子

倉林明子君 日本共産党の倉林です。
 まず、今後採択に付されます両法案について、意見を表明しておきたいと思います。
 まず、障害者情報アクセシビリティー推進法についての意見を表明します。
 本法案の制定により、障害のある人の情報取得、利用、意思疎通が実質的に保障されることが必要です。手話通訳、要約筆記、情報通信機器等、情報コミュニケーション支援は地域生活支援事業の位置付けにとどまり、地域間格差が深刻です。今後、当事者参加の下、現状を点検し、自立支援給付に引き上げ、財政措置の拡充など実質的な権利保障の措置を求めるものです。
(以下略)

051 舩後靖彦

○委員以外の議員(舩後靖彦君) れいわ新選組、舩後靖彦でございます。
 本日は、議員立法、障害者情報コミュニケーション施策推進法案に関しまして厚生労働委員会での質問の機会をいただき、本当にありがとうございます。山田宏委員長、理事の先生方、とりわけ御尽力いただきました野党筆頭理事の川田龍平先生に厚く御礼申し上げます。
 私は、働き盛りの四十一歳のときにALSを発症し、四十四歳で人工呼吸器を付けるために喉に穴を空けましたので、声を出して話すことができません。介助者が透明のプラスチック製の文字盤を指で指し示し、まばたきしたところで一文字一文字確定して、意思を伝えています。あるいは、皆さんがマウスでカーソルを動かすようにチューブを歯でかんでセンサーを作動させ、パソコンを操作して、文書作成やメール、ネット検索などをしています。また、眼球の縦方向の動きが難しいため、縦書きの文章は読めません。テキストデータを音声変換するソフトで音声読み上げをして聞いています。
 このように、情報保障とコミュニケーション支援を必要としている私にとって、情報アクセシビリティー、コミュニケーション支援を保障する包括的な法律ができることは大変重要であり、ほかの多くの当事者の方々同様、長らく待ち望んでいた法律です。少しでも実効性のある良いものにしていただきたく、これから質問をさせていただきます。
 まず冒頭、大臣にお伺いいたします。
 障害者総合支援法バリアフリー法読書バリアフリー法などにより、情報保障、コミュニケーション支援などの合理的配慮についての取組が広がってきています。しかし、地域、分野、行政、事業所ごとに対応の差が大きく、障害者権利条約の第二十一条が規定する表現及び意見の自由並びに情報へのアクセスが権利として可能となっている状況とは言えません。
 大臣は、本法案の重要性に関してどうお考えでしょうか。

052 後藤茂之

国務大臣後藤茂之君) 本案の草案によりますと、本法案は、全ての障害のある方々が、社会の様々な分野において、必要な情報の取得や利用、円滑な意思疎通を行うことに関して、その重要性を改めて認識し、基本理念を定め、国や地方公共団体、事業者等の責務を明らかにするといった内容であると承知をいたしております。
 厚生労働省としては、障害のある方々が必要な情報の取得や円滑な意思疎通を行うことは大変重要であると再認識するとともに、法案が成立した場合は、引き続き、意思疎通支援といった障害のある方々に対する支援にしっかり取り組むとともに、その充実に努めてまいります。

053 舩後靖彦

○委員以外の議員(舩後靖彦君) ありがとうございます。
 大臣の意気込みを感じることができ、大変心強い限りです。
 次の質問に移ります。
 本法案第十条に基づき、既存の障害者総合支援法バリアフリー法読書バリアフリー法電話リレーサービス法などに規定されている情報保障、コミュニケーション支援施策、あるいは本法案第十三条第二項が努力義務となっている点などの見直し、改正を行うことになると考えてよろしいのでしょうか。

054 後藤茂之

国務大臣後藤茂之君) 本法案の草案によりますと、第十条において、政府は、障害のある方々が必要な情報の取得や円滑な意思疎通を行うことに関して、必要な措置を講じなければならないとされていると承知をいたしております。
 法案が成立した場合は、意思疎通支援といった障害のある方々に対する支援に取り組むとともに、その充実に努めてまいりたいと考えております。
 その上で、必要に応じて障害のある方々の情報保障や意思疎通に関係する法令の見直しや支援策の運用の改善等の検討がなされることになるものと考えております。

055 舩後靖彦

○委員以外の議員(舩後靖彦君) ありがとうございます。
 次の質問に移ります。
 法案第十三条第二項が努力義務になっています。国、地方団体が事業者の取組を支援すべく必要な施策を取る際、その範囲は地方公共団体によって違いはあるかと存じます。しかし、施策を取ること自体は努力義務ではなく、第一項同様に義務規定とすべきではないかと考えますが、厚生労働省としてどのように取り組んでいかれるのでしょうか。

056 田原克志

○政府参考人(田原克志君) お答えいたします。
 法案の草案によりますと、第十三条第二項におきまして、国及び地方公共団体は、各事業者が行う意思疎通のための取組を支援するために必要な施策を講ずるよう努めるものとされていると承知をしております。
 各事業者が行う取組は様々なものがあると想定されますので、それらの取組を全て支援することは難しいと考えておりますけれども、障害のある方々が必要な情報の取得や円滑な意思疎通を行うことは大変重要であると考えておりますので、法案が成立した場合には、できる限り幅広い分野で支援が行われるように、必要な予算の確保も含めて取り組んでまいりたいと考えております。

057 舩後靖彦

○委員以外の議員(舩後靖彦君) ありがとうございます。
 次の質問に移ります。
 法案策定過程で、幾つか法文の書きぶりについて要望、質問をいたしました。そのうち幾つかについては、法案の条文若しくはほかの法律でカバーされているという御回答をいただきました。それならば、法律の具体的な説明や解釈を施行規則の別表に例示するとか、関係機関へ法の周知をする際、QアンドAを作成して通知と共に配付する、ホームページで公表するなどして、法案の趣旨が具体的に見えるようにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

058 難波健太

○政府参考人(難波健太君) お答えします。
 共生社会の実現に向けて、障害のある方が社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加するために必要とする情報を取得、利用することや、円滑に意思疎通を図ることができるよう、障害のある方による情報の取得、利用、意思疎通に係る施策を総合的に推進することは大変重要であると考えているところでございます。
 法律が成立した場合でございますが、ホームページでの公表、また地方公共団体への通知の発出を始めといたしまして、関係省庁とも連携をして必要な周知を図ってまいりたいというふうに考えてございます。

069 川田龍平

川田龍平君 ただいま議題となりました障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律案の草案につきまして、その趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。
 (中略)全ての障害者が、社会を構成する一員として、社会、経済、文化等あらゆる分野の活動に参加するためには、障害者が必要とする情報へのアクセシビリティーを向上させることやコミュニケーションの手段を充実させることが極めて重要であります。
 これまでも、障害者基本法や同法に基づく障害者基本計画において、情報の利用におけるバリアフリー化、情報アクセシビリティーの向上、意思疎通支援の充実といった方向性が示され、これらに基づいて各種の施策が講じられてきておりますが、より一層の施策の推進が求められていることから、その根拠となる、障害者の情報アクセシビリティーやコミュニケーションに焦点を当てた新たな法律の制定が必要とされております。
 こうした状況を踏まえ、本案は、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資するため、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、当該施策の基本となる事項を定めること等により、当該施策を総合的に推進しようとするものであります。
 次に、本案の主な内容について御説明申し上げます。
 第一に、基本理念として、障害者による情報の取得等に係る施策の推進に当たっては、障害者による情報の取得等に係る手段について、その障害の種類及び程度に応じた手段を選択することができるようにすることや、障害者が取得する情報について、障害者でない者が取得する情報と同一の内容の情報を障害者でない者と同一の時点において取得することができるようにすること等を旨として行わなければならないこととしております。
 第二に、国及び地方公共団体は、これらの基本理念にのっとり、障害者による情報の取得等に係る施策を策定し、及び実施する責務を有することとしております。あわせて、国及び地方公共団体は、当該施策が障害者でない者による情報の十分な取得等にも資するものであることを認識しつつ、当該施策を策定し、及び実施するものとし、当該施策を講ずるに当たっては、障害者等の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めなければならないこととしております。
 第三に、国及び地方公共団体は、障害者による情報取得等に資する機器等の開発及び普及の促進を図るため、当該機器等に関し、開発及び提供に対する助成その他の支援、規格の標準化、障害者等に対する情報提供及び入手の支援その他の必要な施策を講ずるものとすることとしております。あわせて、国は、当該機器等の開発及び普及の促進並びに質の向上に資するよう、協議の場の設置その他関係者の連携協力に関し必要な施策を講ずるものとすることとしております。
 第四に、国及び地方公共団体は、障害の種類及び程度に応じて障害者が防災及び防犯に関する情報を迅速かつ確実に取得することができるようにするため、体制の整備充実、設備又は機器の設置の推進その他の必要な施策を講ずるものとすることとしております。
 第五に、国及び地方公共団体は、障害者が自立した日常生活及び社会生活を営むために必要な分野において、障害者がその必要とする情報を十分に取得すること等ができるようにするため、障害者とその他の者の意思疎通の支援を行う者の確保、養成及び資質の向上その他の必要な施策を講ずるものとすることとしております。
 なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。
 以上が、この法律案の草案の趣旨及び主な内容であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律案(抄)

障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律案:参議院

(目的)
第一条 この法律は、全ての障害者が、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加するためには、その必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができることが極めて重要であることに鑑み、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の基本となる事項を定めること等により、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。

(定義)
第二条 この法律において「障害者」とは、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第二条第一号に規定する障害者をいう。

(基本理念)
第三条 障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進は、次に掲げる事項を旨として行われなければならない。
一 障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る手段について、可能な限り、その障害の種類及び程度に応じた手段を選択することができるようにすること。
二 全ての障害者が、その日常生活又は社会生活を営んでいる地域にかかわらず等しくその必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができるようにすること。
三 障害者が取得する情報について、可能な限り、障害者でない者が取得する情報と同一の内容の情報を障害者でない者と同一の時点において取得することができるようにすること。
四 デジタル社会(デジタル社会形成基本法(令和三年法律第三十五号)第二条に規定するデジタル社会をいう。)において、全ての障害者が、高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術の活用を通じ、その必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができるようにすること。

(国及び地方公共団体の責務等)
第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
地方公共団体は、前条の基本理念にのっとり、その地域の実情を踏まえ、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を策定し、及び実施する責務を有する。
3 国及び地方公共団体は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策が障害者でない者による情報の十分な取得及び利用並びに円滑な意思疎通にも資するものであることを認識しつつ、当該施策を策定し、及び実施するものとする。

(事業者の責務)
第五条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、障害者がその必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができるようにするよう努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策に協力するよう努めなければならない。

(国民の責務)
第六条 国民は、障害者による情報の十分な取得及び利用並びに円滑な意思疎通の重要性に関する関心と理解を深めるよう努めるものとする。

(関係者相互の連携及び協力)
第七条 国、地方公共団体、事業者その他の関係者は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策が効率的かつ効果的に推進されるよう、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。

(中略)

(障害者基本計画等との関係)
第九条 政府が障害者基本法第十一条第一項に規定する障害者基本計画を、都道府県が同条第二項に規定する都道府県障害者計画を、市町村が同条第三項に規定する市町村障害者計画を策定し又は変更する場合には、それぞれ、当該計画がこの法律の規定の趣旨を踏まえたものとなるようにするものとする。
2 政府は、障害者基本法第十三条の規定により国会に提出する報告書において、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の実施の状況が明らかになるようにするものとする。

(法制上の措置等)
第十条 政府は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

(障害者による情報取得等に資する機器等)
第十一条 国及び地方公共団体は、障害者による情報の十分な取得及び利用並びに円滑な意思疎通に資する情報通信機器その他の機器及び情報通信技術を活用した役務以下この条及び第十五条において「障害者による情報取得等に資する機器等」という。)の開発及び普及の促進を図るため、障害者による情報取得等に資する機器等に関し、開発及び提供に対する助成その他の支援、規格の標準化、障害者又はその介助を行う者(次項及び第三項において「障害者等」という。)に対する情報提供及び入手の支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 国及び地方公共団体は、障害者等が障害者による情報取得等に資する機器等の利用方法を習得することができるようにするため、障害者による情報取得等に資する機器等の利用に関し、障害者の居宅における支援、講習会の実施、障害者等からの相談への対応その他の必要な取組を自ら行うとともに、当該取組を行う者を支援するために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
国は、障害者による情報取得等に資する機器等の開発及び普及の促進並びに質の向上に資するよう、内閣府、デジタル庁、総務省厚生労働省経済産業省その他の関係行政機関の職員、障害者による情報取得等に資する機器等を開発し又は提供する者、障害者等その他の関係者による協議の場を設けることその他関係者の連携協力に関し必要な措置を講ずるものとする。

(防災及び防犯並びに緊急の通報)
第十二条 国及び地方公共団体は、障害の種類及び程度に応じて障害者が防災及び防犯に関する情報を迅速かつ確実に取得することができるようにするため、体制の整備充実、設備又は機器の設置の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 国及び地方公共団体は、障害の種類及び程度に応じて障害者が緊急の通報を円滑な意思疎通により迅速かつ確実に行うことができるようにするため、多様な手段による緊急の通報の仕組みの整備の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。

(障害者が自立した日常生活及び社会生活を営むために必要な分野に係る施策)
十三条 国及び地方公共団体は、医療、介護、保健、福祉、教育、労働、交通、電気通信、放送、文化芸術、スポーツ、レクリエーション、司法手続その他の障害者が自立した日常生活及び社会生活を営むために必要な分野において、障害者がその必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができるようにするため、障害者とその他の者の意思疎通の支援を行う者(第十五条において「意思疎通支援者」という。)の確保、養成及び資質の向上その他の必要な施策を講ずるものとする。
国及び地方公共団体は、医療、介護、保健若しくは福祉に係るサービスを提供する者、学校の設置者、事業主、交通施設(移動施設を含む。)を設置する事業者、電気通信若しくは放送の役務を提供する事業者又は文化芸術施設、スポーツ施設若しくはレクリエーション施設の管理若しくは運営を行う者が行う障害者による情報の十分な取得及び利用並びに円滑な意思疎通のための取組を支援するために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

(障害者からの相談及び障害者に提供する情報)
第十四条 国及び地方公共団体は、障害者からの各種の相談に応ずるに当たっては、障害者がその必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができるよう配慮するものとする。
2 国及び地方公共団体は、障害者に情報を提供するに当たっては、その障害の種類及び程度に応じてこれを行うよう配慮するものとする。
(国民の関心及び理解の増進)

第十五条 国及び地方公共団体は、障害者による情報の十分な取得及び利用並びに円滑な意思疎通の重要性に関する国民の関心と理解を深めるよう、障害者による情報取得等に資する機器等の有用性、障害者による円滑な意思疎通において意思疎通支援者が果たす役割等に関する広報活動及び啓発活動の充実その他の必要な施策を講ずるものとする。

(調査研究の推進等)
第十六条 国及び地方公共団体は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に関する調査及び研究を推進し、その成果の普及に努めるものとする。

ウェブなアクセシビリティとこの法律案との関係性を教えて詳しい人


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