(メモ)障害者基本計画(第5次)本文案とかのらくがき

あるいは、JIS X 8341シリーズと情報アクセシビリティ自己評価様式

障害者基本計画(第5次)本文案

第71回 障害者政策委員会 議事次第 令和4年10月5日(水)

障害者基本計画(第5次) 本文案
※ 第65 回、67 回、68 回障害者政策委員会から修正のあった箇所については、insdel要素で表す1

主な箇所の抜粋

Ⅲ 各分野における障害者施策の基本的な方向
3.情報アクセシビリティの向上及び意思疎通支援の充実

【基本的考え方】
障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法に基づき、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を充実させ、障害者が必要な情報に円滑にアクセスすることができるよう、障害者に配慮した情報通信機器・サービス等の企画、開発及び提供の促進や、障害者が利用しやすい放送・出版の普及等の様々な取組を通じて情報アクセシビリティの向上を一層推進する。あわせて、障害者が円滑に意思表示やコミュニケーションを行うことができるよう、意思疎通支援を担う人材の育成・確保やサービスの円滑な利用の促進、支援機器の開発・提供等の取組を通じて意思疎通支援の充実を図る。


(1) 情報通信における情報アクセシビリティの向上
○ 研究開発やニーズ、ICTの発展等を踏まえつつ、情報アクセシビリティの確保及び向上を促すよう、適切な標準化2を進めるとともに、必要に応じて国際規格提案を行う。また、各府省における情報通信機器等3の調達は、情報アクセシビリティの観点に配慮し、国際規格、日本産業規格への準拠・配慮に関する関係法令に基づいて実施する。特に、WTO政府調達協定の適用を受ける調達等4を行うに当たっては、WTO政府調達協定等5の定めるところにより、適当な場合には、アクセシビリティに関する国際規格が存在するときは当該国際規格6に基づいて技術仕様を定める。[3-(1)-2]


○ 企業等が自社で開発するデジタル機器・サービスが情報アクセシビリティ基準(JIS X 8341 シリーズ等)に適合しているかどうかを自己評価するチェックシート(通称:「日本版 VPAT」)等の普及展開を促進する。また、引き続き、デジタル・ガバメント推進標準ガイドラインに則り、政府情報システムに係る調達において「日本版 VPAT」の書式を用いて、障害の種類・程度を考慮した確認を求める。[3-(1)-3]


(4) 行政情報のアクセシビリティの向上
○ 各府省において、障害者を含む全ての人の利用しやすさに配慮した行政情報の電子的提供の充実に取り組むとともに、ウェブサイト等で情報提供を行うに当たっては、キーボードのみで操作可能な仕様の採用、動画への字幕や音声解説の付与など、最新のウェブアクセシビリティ規格を踏まえ、「みんなの公共サイト運用ガイドライン」に即した必要な対応を行う。また、「みんなの公共サイト運用ガイドライン7」について必要な見直しを行うこと等により、公的機関等の地方公共団体等の公的機関におけるウェブアクセシビリティの向上等に向けた取組を促進する。[3-(4)-2]

JIS X 8341シリーズ

アクセシビリティに関する規格体系 ①基本規格(ガイド71) すべての製品・サービスに関わる基本となるもの ②分野別共通規格(セクターガイド) 分野内で共通とするもの〈考え方や個別機能〉 ③個別規格(製品規格・ガイドライン)

令和4年版障害者白書図表5-11 アクセシビリティに関する規格体系にも(現在の規格に沿った)類似の図が載っている

JSA 規格検索結果 JIS規格 X8341

  • JIS Z 8071:2017
  • JIS X 8341-1:2010
    • ISO 9241-20:2008 (IDT) revised by ISO 9241-20:2021
      • ISO/TC 159/SC 4 Ergonomics of human-system interaction
    • 高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス―第1部:共通指針
    • (ISO 9241-20:2008) Ergonomics of human-system interaction — Part 20: Accessibility guidelines for information/communication technology (ICT) equipment and services
    • (ISO 9241-20:2021) Ergonomics of human-system interaction — Part 20: An ergonomic approach to accessibility within the ISO 9241 series
  • JIS X 8341-2:2014
    • ISO/IEC 29136:2012 (IDT)
      • ISO/IEC JTC 1/SC 35 User interfaces
    • 高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス―第2部:パーソナルコンピュータ
    • Information technology — User interfaces — Accessibility of personal computer hardware
  • JIS X 8341-3:2016
    • ISO/IEC 40500:2012 (IDT) / W3C WCAG 2.0
      • 2023年以降にWCAG 2.2に改訂???
      • ISO/IEC JTC 1 Information technology
    • 高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス―第3部:ウェブコンテンツ
    • Information technology — W3C Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0
  • JIS X 8341-4:2018
    • 対応国際規格:なし
      • 「この規格は,2007 年に発行された ITU-T F.790を参考に作成しているが,技術的内容を変更して作成した日本工業規格である。」
    • 高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス―第4部:電気通信機器
      • Telecommunications accessibility guidelines for older persons and persons with disabilities
  • JIS X 8341-5:2022
    • ISO/IEC 10779:2020 (IDT)
      • ISO/IEC JTC 1/SC 28 Office equipment
    • 高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス―第5部:事務機
  • JIS X 8341-6:2013
    • ISO 9241-171:2008 (IDT)
      • ISO/TC 159/SC 4 Ergonomics of human-system interaction
    • 高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス―第6部:対話ソフトウェア
    • Information technology — Office equipment — Accessibility guidelines for older persons and persons with disabilities
  • JIS X 8341-7:2011
    • ISO/IEC 24786:2009 (IDT)
      • ISO/IEC JTC 1/SC 35 User interfaces
    • 高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス―第7部:アクセシビリティ設定
    • Information technology — User interfaces — Accessible user interface for accessibility settings

アクセシビリティに関する人間工学関連規格の動向 -9241-20の改定に伴うアクセシビリティ関連規格の課題と今後についての検討- J-STAGE公開日: 2022/09/01

JIS X 8341-1:2010をISO 9241-20:2021に一致(IDT)させて改定することは、関連する規格に対する影響が大きいことが予想されるため、ISO 9241-1:2021は内容が一致するJIS規格を新たに作成し、現行のJIS X 8341-1:2010は、内容を変更せず、対応国際規格無しのJISとして改定する方針がたてられた。

ええっ…一部なりとも内容が重複するJISを並立させるということ(?)

VPAT

Voluntary Product Accessibility Template - Wikipedia

The template is a registered service mark of the Information Technology Industry Council (ITI).

例:お客様およびパートナー様向け – Google ユーザー補助機能

自主的製品アクセシビリティ テンプレート(VPAT)

企業、教育機関、政府機関がユーザー補助の標準に準拠しやすくなるように、Google では、障がいのあるユーザー向けに Google のプロダクトで現在行っている取り組みについて透明性のある情報を提供しています。以下の自主的製品アクセシビリティ テンプレート(VPAT)をご覧ください。新たな VPAT ドキュメントの追加に伴い、引き続きこのサイトを更新していく予定です。

情報アクセシビリティ自己評価様式

ICT機器・サービスのアクセシビリティ推進 - 総務省|情報バリアフリー環境の整備|情報アクセシビリティの確保

【作成要領】情報アクセシビリティ自己評価様式(日本版VPAT)の作成に向けて

3.作成手順
(2)「様式作成時の技術基準」の選択・作成
用いる技術基準を選択します。技術基準は以下の3パターンがあります。
なお、基本としては、パターン②及び③については既にアメリカおよびヨーロッパに参入している、または参入を検討しており、これら規格への対応を整理している、または整理する予定であるICT機器・サービスにおいてのみ利用とし、それら以外はパターン①を技術基準として用いてください。

  • パターンA 技術基準としてJISx8341シリーズを利用
  • パターンB 技術基準として米国リハビリテーション法508条を利用
  • パターンC 技術基準としてEN規格(EN 301 549)を利用

パターン①、②、③が見当たりませんが、おそらくパターンA、B、Cのことでしょう…。

「x」と小文字で表記されているのは気になりますが8それはさておき、JIS X 8341-3:2016を選択して、Section 508やEN 301 549と整合性の取れる情報アクセシビリティ自己評価様式を作成することができるのでしょうか…(?)

情報アクセシビリティ自己評価様式の普及展開に関する調査研究(令和3年度)

令和3年度 情報アクセシビリティ基準適合に関する自己評価の 普及展開に関する請負 -報告書(概要版)-

技術基準(JISx8341シリーズ)の問題点について また、JISx8341シリーズの改訂が欧米規格の更新に間に合っていないこと、JIS規格は作成されて10年以上経過しており技術水準が当時から進歩している。

🤔🤔🤔

障害者基本計画(第5次)本文案の再掲と雑感

(4) 行政情報のアクセシビリティの向上
○ 各府省において、障害者を含む全ての人の利用しやすさに配慮した行政情報の電子的提供の充実に取り組むとともに、ウェブサイト等で情報提供を行うに当たっては、キーボードのみで操作可能な仕様の採用、動画への字幕や音声解説の付与など、最新のウェブアクセシビリティ規格を踏まえ、「みんなの公共サイト運用ガイドライン」に即した必要な対応を行う。また、「みんなの公共サイト運用ガイドライン[^29]」について必要な見直しを行うこと等により、公的機関等の地方公共団体等の公的機関におけるウェブアクセシビリティの向上等に向けた取組を促進する。[3-(4)-2]

  • 「キーボードのみで操作可能な仕様の採用、動画への字幕や音声解説の付与など」と書いているわりには、これらのウェブアクセシビリティ対応が特段に進んでいるとは思えない
    • そもそも、なぜこの3つの具体的な達成基準を意識した文言が取り上げらているのかが謎
  • 「最新のウェブアクセシビリティ規格を踏まえ」という文言が入ったのも謎
    • WCAG 2.2がISO化するだろうことを見込んでいる?
      • スマートフォン対応という文脈で、WCAG 2.0の後続仕様であるWCAG 2.1の話が出てきたりするが、別にWCAG 2.1あるいは2.2になったからといって技術的にスマートフォン対応が進むわけではない
    • ここでいう「規格」はISO/IECの国際規格だとしたら、そう書く必要性を感じない
    • "デファクトスタンダード"であるW3C"技術文書"を参照するのであれば、まだわかるが
  • 『「みんなの公共サイト運用ガイドライン」について必要な見直しを行うこと等』という文言が入ったのは評価したい
    • 「等」とあり、民間向けのガイドライン策定も視野に入るかもしれない

  1. 原文では《二重山形かっこ書き》で前後を挟んでいるもの。

  2. 日本産業規格等を想定。

  3. ウェブコンテンツ(掲載情報)に関するサービスやシステムを含む。

  4. 政府調達に関する議定書(以下「議定書」という。)の適用を受ける調達若しくは政府調達に関する協定を改正する議定書(以下「改正議定書」という。)の適用を受ける調達又は「政府調達手続に関する運用指針等について」(平成26年3月31日関係省庁申合せ。以下「運用指針等」という。)の適用を受ける調達をいう。

  5. 議定書若しくは改正議定書又は運用指針等をいう。

  6. JISZ8071「規格におけるアクセシビリティ配慮のための指針」など、国際規格に整合する国内の指針等を含む。

  7. ウェブアクセシビリティ(誰もがウェブサイト等で提供される情報や機能を支障なく利用できること)の維持・向上に向けた公的機関の取組を支援することを目的とした手順書。

  8. 固有名詞を間違えるの、よくないと思うんですよ。

(メモ)W3Cアクセシビリティ成熟度モデルの話

界隈的にはWCAG 2.2 CRが話題になってると思いますけども、WCAG 2.2 CRと同じ日に、ドラフトノートとしてW3C Accessibility Maturity ModelW3Cアクセシビリティ成熟度モデル)という文書が発行されています。

これは何なのか?というのは、この文書のAbstractには次のようにあります。

The W3C Accessibility Maturity Model is a guide for organizations to evaluate and improve their business processes to produce digital products that are accessible to people with disabilities. Use of the W3C Accessibility Maturity Model will provide organizations informative guidance (guidance that is not normative and does not set requirements) on improving accessibility policies, processes, and outcomes.

This document is designed to work for any size of organization, from small to large corporations or government agencies. Additionally, this is intended to be independent of the requirements set forth in relevant technical accessibility standards, such as the Web Content Accessibility Guidelines (WCAG).

Google訳(一部修正)ですとこういう感じ:

W3Cアクセシビリティ成熟度モデルは、組織がビジネス プロセスを評価および改善して、障害を持つ人々がアクセスできるデジタル製品を作成するためのガイドです。W3Cアクセシビリティ成熟度モデルを使用することで、アクセシビリティポリシー、プロセス、および成果を改善するための有益なガイダンス(規範的ではなく、要件を設定しないガイダンス)を組織に提供します。

この文書は、小規模から大規模な企業や政府機関まで、あらゆる規模の組織で機能するように設計されています。さらに、これは、Web Content Accessibility Guidelines (WCAG)など、関連する技術的なアクセシビリティ標準で規定されている要件から独立していることを意図しています。

このように、WCAGとは別物の文書である、と謳っています。なお、この文書の出自ではないですが、1.3 Existing Research and Standardsでは既存の規格として、ISO/IEC 30071-1:2019を挙げています1,2

ちなみに、W3C Accessibility Maturity Model | W3C Blogでは、成熟度モデルが必要な理由について記述されています。

いろいろと書かれていますが、個人的に気になったところを取り上げますと、

  • Accessibility Conformance Reports / Voluntary Product Accessibility Template (ACR/VPAT)は、ある時点で凍結された製品(product)の単一バージョンのスナップショットを調べます。ACR/VPATは、アクセシビリティが繰り返されるかどうかを評価しないため、製品リリースタイムラインの後半でその製品のアクセシビリティについて保証はありません。
  • アクセシビリティ成熟度モデリングは、アクセシビリティ適合性テストとは大きく異なります。
    • 適合性テストは、特定の時点における特定の製品のアクセシビリティ適合レベルに関する情報を提供します。適合性テストの結果は、製品の特定のバージョン(または製品のコンポーネント)の全体像を提供します。
    • 成熟度モデリングは、長期にわたってアクセシブルな製品を生産する組織の能力に関する情報を提供します。成熟度モデリング評価の結果は、組織のアクセシビリティのイニシアチブの全体像―組織がアクセシビリティをうまく行っている場所と、障壁を取り除くために改善できる場所―を提供します。

成熟度モデルの着目点としては、製品(product)をアクセシブルにするだけでは十分ではなく、製品の体験全体をアクセシブルにする必要がある、というところにあります。このようにWCAGを位置付けることで、見えてくるものもあるなと感じているところです。


  1. いつだったか@yomochanが、たしかHassell Inclusionのこのページを通してISO/IEC 30071-1:2019を紹介していた気もします。

  2. というかこのISO、ISO/IEC JTC 1/SC 35ということに気づきました。どうしよう(どうしよう、とは)。