EPUB Accessibility 1.1について気が向いたので少しだけ読んでみたんですけど、首をかしげる箇所があったという話。ちなみに、これを書いてたときに読んだのは以下のURLです。
https://www.w3.org/TR/2021/WD-epub-a11y-11-20211029/
EPUB Accessibility 1.1については、FRWD(2021年2月ぐらい)を底本にしている日本語訳が役に立つのかもしれません。
https://japan-daisy-consortium.github.io/translations/epub-specs/epub33/a11y/
Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0も役に立つはず、というかめんどっちいのでWCAG2は日本語訳を引いてきてます。
で、3.3.1 WCAG Conformance Requirementsという本仕様の本丸だろう箇所なのですけども、
To conform to this specification, an EPUB Publication:
MUST meet the requirements of WCAG 2.0 [WCAG20], but it is strongly RECOMMENDED that it meet the requirements of the latest recommended version of WCAG 2.
MUST meet the requirements of Level A, but it is strongly RECOMMENDED that it meet the requirements of Level AA [WCAG2].
とあり。ここでまず、requirementsが何を指しているのかが少し曖昧だと思ってて、おそらく適合要件(Conformance Requirements)のことだと思うのだけれども、いまいち確証がなかったり。最新版(WCAG2で最新の勧告)を満たすことが推奨されているんですけれども、WCAG2シリーズでここが変わったらそれはもはやWCAG2ではないと思うので、このように書く意図がよくわからないな、と。
それから、Level Aとだけ書かれているわけですが、まあこれは適合レベル(Conformance Level)のレベルAという認識でよいとしても、[WCAG20]ではなくて、[WCAG2]を指しているのは問題かもしれません。WCAG2はWCAG 2.0とWCAG 2.0の後続のWCAG 2.1があって、さらにWCAG 2.1の後続のWCAG 2.2が勧告にむけて策定中だったり1するわけですけど、この行を素直に解釈すると、WCAG 2.1のレベルAを満たさなければならない、と読めるわけです。ただ、直前の段落ではWCAG 2.0と明示しているので、WCAG 2.0のレベルAと解釈するのがよさそうではあります。
ただし、これについては、後続の段落で、
This specification sets the baseline requirement to WCAG 2.0 Level A
とあるので、[WCAG20]と解釈するのが妥当そうです。しかしながら、WCAG 2.0レベルAだとすると、WCAG 2.1レベルAとしてWCAG 2.0から追加された達成基準(success criteria)はどうするんでしょう、という別の疑問がわいてきます。WCAG 2.1レベルAがMUSTだとすると、直前の段落の規定と矛盾してきそうですが、もしかしたら私が読み違えているだけなのかもしれません。
ちなみに、Member SubmissionのEPUB Accessibility 1.0 - 2.2 Accessible EPUB Publicationsでは、
An EPUB Publication must meet the following criteria to be accessible per this specification: (中略) It must meet the requirements for [WCAG 2.0] conformance defined in WCAG Conformance Requirements.
とだけ書いてあるので、混乱することなく安全安心ですね。
ところで、4. Optimized Publicationsというセクションがあります。これはnon-normativeということですので、規定の一部ではないわけですが、
Although WCAG [WCAG2] provides a general set of guidelines for making content broadly accessible, conformant content is not always optimal for specific user groups. Conversely, content optimized for a specific need or reading modality is often not conformant to WCAG exactly because it targets a specific audience.
ここは英語を読むのがめんどっちいので、EPUBの日本語訳を引きますと、
WCAG [WCAG2] は、コンテンツを広くアクセシブルにするための一般的なガイドラインのセットを提供するが、適合するコンテンツが必ずしも特定のユーザー グループにとって最適であるとは限らない。逆に、特定のニーズや読書モダリティに最適化されたコンテンツは、幅広いユーザーのために設計されてないので、WCAG に適合していないことが多い。
とまあ、そういうこともあるよねぇ…とさらっと目を通したんですけども、このセクションではWCAG2の適合している代替版 (conforming alternate version)の話が出てこなかったりしました。どういうEPUB出版物を想定しているのかあんまりわからないですが、適合している代替版さえあればオッケーとか書かないのは、WCAG2と矛盾しそうな気もしますが、どんなもんでしょうか。
まあ、規定じゃないからいいか…と言いたいところなのですけども、日本語訳の底本であるFPWDではnon-normativeとは書いてないので規定ということになりますし、なんならEPUB Accessibility 1.0 - 5.Optimized Publicationsでもnon-normativeとは書いてないので規定ということになります。地味に怖いですね。
なお、EPUB accessibilityがISO/IEC 23761として公開 | kzakzaということで、だいたいEPUB Accessibility 1.0がISO/IEC 23761:2021みたいですけども、これがJISになって降ってくることが決まってます(EPUBアクセシビリティJIS原案作成委員会の発足)。
特にオチはありませんが、今日はこのあたりで。
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TPAC 2021とCRに進むのがどっちが早いかなと思ってたら、やっぱりTPACのほうが早かった↩