公共系のウェブアクセシビリティの要件定義を考えるみたいな話から行政への働きかけ云々

散らかってる上に、読み返してないのでおかしな文章になってるかもですが。

さておき、少し前ですけどなんかのイベントで雑談する機会があって、地方自治体の仕様書が斜め上でアレって話を聞いた記憶があるんですけども。例えば公共系の巷によくある文字サイズを変更するボタンとか、あれぶっちゃけ仕様書に入っちゃってるんで、どうしようもない的な怨嗟の声とか聞いたことがあった気がするんですけども、結局もっと上のレイヤーでそういう文言が入っちゃってるからそうなると考えるわけで。

たとえば、平成29年(2017年)3月に発行されている国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針というのがありまして、これはまあ障害者差別解消法で定めるところの基本方針に基づいて、事業者が適切に対応するために必要な指針というものが出されるわけです(法第11条)

その中には【航空運送業関係】として

(2)合理的配慮の提供の具体例
① 多くの事業者にとって過重な負担とならず、積極的に提供を行うべきと考えられる事例
・ WEBサイトにて、障害のある利用者用の情報を分かりやすく掲載するとともに、音声読みあげ、文字拡大機能をつける。

とまあ、JIS X 8341-3:2016から考えるとまるで無意味な機能が紛れ込んでいるわけです。

これは、みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016 年版)の2.1.4. ウェブアクセシビリティ対応に関する誤解で名指しで批判されているものでもあると。

注意点!
ホームページ等において、音声読み上げ、文字拡大、文字色変更等の支援機能を提供する事例がありますが、これだけでは、ウェブアクセシビリティに対応しているとは言えません。
利用者は、多くの場合、音声読み上げソフトや文字拡大ソフトなど、自分がホームページ等を利用するために必要な支援機能を、自身のパソコン等にインストールし必要な設定を行った上で、その支援機能を活用して様々なホームページ等にアクセスしています。つまり、ホームページ等の提供者に求められるアクセシビリティ対応とは、ホームページ等においてそのような支援機能を提供することではなく、ホームページ等の個々のページを JIS X 8341-3:2016 の要件に則り作成し提供することにより、利用者がそのページを閲覧できるようにすることです。

(事業者向けの)対応指針という法に基づいて定められる文書が、総務書の出す(公共サイト向けの)ガイドラインと見事に噛み合ってないという素敵な事態が現に起きてるわけですね。すごい。

話はガラッと変わって、今はデジタル庁に取って代わられた内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室が2019年4月にWebサイトガイドブックというものを出しているんですけど、このガイドブックというのは

本ガイドブックは、Web サイトのデザイン、Web サイトの構造、情報収集を容易にするためのタグの統一等、利用者視点での情報提供を行うため、政府のWeb サイトにおいて留意すべき事項を示したものであり、(以下略)

とまあ、Webサイトの留意事項を並べていると。ここで「5.2 対応すべき技術標準」「1) HTML5 / CSS3」というセクションがあって、

Web サイトを構成するページの内容や体裁情報の記述においては、一般的なWeb ブラウザがサポートする標準技術である HTML5/CSS3 注記)を用いることを推奨します。 注記)HTML5/CSS3 の仕様は、次の URL を参照してください。
HTML5: https://www.w3.org/TR/html/
CSS3: https://www.w3.org/TR/?tag=css&status=rec&version=latest

まあ、HTML5というのはとりあえずよしとして、CSS3という公式には存在し得ない怪しい文言が政府文書にも関わらず躍り出ていますが、それ以上になんだこの参照URLは。Web仕様に通じている人間がこの文書策定に携わってないことが見てとれるのが恐ろしいですね。

で、あとはデジタル庁の会議資料とかまあ全然ちゃんと追いかけられてないんですけど、2021年12月8日に開催された第3回デジタル社会構想会議資料2:自治体職員有志チーム提出資料(「誰一人取り残さない人に優しいデジタル化」のために)というのがあったりするんですけど、ここにアクセシビリティの観点の文言は一切出てこないどころか、シビックテックとかいう大層な文言で「東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト」の事例が出されてるわけですけども、現場はカネを出さないという意思表示と捉えてよいですかね。この資料を読む限りでは、現場職員は情報アクセシビリティという観点に欠けていると言わざるを得ないのではないでしょうか。非常に心配ですし、「誰一人取り残さない」というのがあさっての方向に向いてるように感じるのは気のせいでしょうか、まあそういうことを主眼に置いた文書でもないのでしょうが。

まあちょっと脱線しましたけども、ウェブアクセシビリティというかJIS X 8341-3:2016、もといWCAG 2.xをベースにして、ウェブアクセシビリティを推し進めていくのがよろしかろう、と個人的には考えているのですけども、現状はそういう流れとはほど遠いと感じます。とりわけ障害者差別解消法で定める対応指針にWCAG観点でおかしな文言が入らないようにすることは重要なポイントかと思います。ここがしっかりしていないから公共調達で現場に即していないような要件定義が紛れ込んでくるわけですから、技術的におかしな方向にならないように、しっかりと意見を具申しなければならないかと。そのためにも、現状把握が急務でしょう。

(メモ)2022年にあわてないための障害者施策動向でも書いたように、対応指針の元になる基本方針は来年夏に決まるというスケジュールであります。基本方針の閣議決定は決まったものを承認するプロセスにしかすぎないわけですから、それより手前で基本方針に何らかねじ込むとしたら、もう時間がないか、すでにタイムオーバーしているかもしれません。

令和3年(2021年)12月13日第60回 障害者政策委員会資料2 基本方針改定に係る事業者団体等からの意見一覧(前半ヒアリング分)に一般社団法人 日本書籍出版協会からのヒアリングが載っているんですけども、テキストデータがーとか斜め上のことを言っていて、EPUBのEの字も出てこないわけですよ。そりゃあまあ紙に印刷するというのが第一なんでしょうけども、電子書籍とか全然頭にないんでしょうねえ…。

あとは、同じく第60回 障害者政策委員会の資料8 障害者基本計画(第5次)の検討に向けた意見の整理・課題等について(案)なんかは、アクセシビリティの文字こそ躍っているものの、ハード面の話が多く、ソフトの話が入っているとしてもアプリが主だったりするわけで

(2)情報アクセシビリティの向上及び意思疎通支援の充実[基本法第 22 条関係、条約第9,21,24 条関係]
ICTを始めとした新たな技術を利活用する際のアクセシビリティへの配慮について(利活用時の当事者参画を含む)
障害の種類によってはサービスが利用できなくなる事態が生じているが、そうした場面におけるアクセシビリティについて、どのように改善しようとしているか。
キャッシュレスや緊急通報アプリのアクセシビリティ向上に係る取組状況を教えてほしい。
アプリについて、盲ろう者にも使えるよう、開発段階から関与させるべき。ワンタイムパスワードや顔認証など、盲ろう者が使いこなせるように開発してほしい。スマホタブレットなど、見える人にとっては便利かもしれないが、盲ろう者等にとっては非常に使いにくい。

ウェブアクセシビリティという文言が直接出てこないことを憂うべき事態だと思うのです。

でまあ、いろいろと書き連ねてはみたんですけども、何をするにもやっぱり現状把握っていうのが大事だと思うんですよ。政府の文書や議事録を漁るというのも到底一人じゃ作業しきれないわけだったりするんですけども、それはそれとして、改正障害者差別解消法の施行に向けて行政に対してウェブアクセシビリティ界隈として何らかの仕込みをする必要があると感じています。というわけで、こういう政策方面に興味のある方誰かいませんかね。一人で考え込んでもしょうがないと思うので、興味のある人と話がしてみたいです。