W3Cで現在公開されているHTMLとDOM仕様は将来廃止されます

まえがき

W3C(とWHATWG)からの公式なアナウンスはまだ確認していませんが、何度目かに結成されるW3C HTML WorkingのDraft Charterと、このCharterから辿れるDRAFT Memorandum of Understanding Between W3C and WHATWG(Memorandumは日本語で覚書などと訳されるので、ここでも覚書と呼びます)がブログエントリーのタイトルのソースになります。もっとも、今確認できる覚書もドラフトですから、変更があるかもしれません。しかしながらURLで観測できるわけですから、大筋でW3CWHATWGとの間で合意が取れているのではないかと推測します。あとは、覚書だけでなくCharterもドラフトということになっていますが、以下の文章では面倒なので省略します。最後にお約束ですが、このブログエントリーは「だいたいあってる」感じにしているので、正確なところは元の文書を当たってください。
なお、当ブログの流れ的には、(メモ)W3C、HTMLとDOM仕様の並立状態が有害であることを認めていたの続きになります。

TL;DR

W3CのHTMLとDOM(と関連仕様)は将来、Superseded Recommendationとして廃止されます。HTMLとDOMは、WHATWG Living Standardが唯一の仕様です。

暇な人向けのやや詳しい内容

まずはCharterのほうから。

最初の行に、「WHATWG HTMLとDOMのレビュードラフトをW3C勧告にすることがミッション」とされています。もうこれだけで説明が事足りると思いますが読み進めていくと、Scopeのセクションでは、(ユーザー、実装者、開発者を含むウェブの)コミュニティとHTMLやDOMに関係するW3CのGroupに対し、HTMLとDOMに何かあれば、WHATWGのレポジトリに直接コントリビュートするように勧められています。ただし、WHTWGのレポジトリに立てたissueに対してWHATWGが公平に解決されないとissueを立てた人が考える場合に、W3C HTML WGが解決の手助けをすることはあるようです。

少なくとも1年に1回はWHATWGのレビュードラフトをW3C文書の言うところの勧告候補相当以上のステータスとして承認するようです。まあ、もはやHTMLとDOMに対して、W3Cの場で技術的な解決をするわけでもないので、例えばCSSのような他のW3C文書ほどステータスにとらわれる必要もないでしょう。更新され続けるWHATWGのHTMLとDOM標準を基本的には見に行けば事足りるわけですから。


もう少し詳しいことは、覚書にはいろいろと書いてあります。

最初のPlan for HTML and DOM specificationsのセクションでは、

HTML and DOM shall be developed principally in the WHATWG, following WHATWG Living Standard (LS) specification process.

という調子で、shallが出てくるのがいかにも覚書という趣を出しているといったところでしょうか。WHATWGでHTMLとDOMは開発されると、くっきりはっきり書かれております。Living Standardのスナップショットにあたるレビュードラフトを、W3C勧告になるようにW3Cがコメントをして承認する、というのが計画とあります。

Format of jointly published documentsのセクションでは、WHATWGレビュードラフトであり、W3Cの勧告候補、勧告案、または勧告でもある文書は、whatwg.orgで公開するものとされています。w3.orgではバックアップを取るともありますが、一般には公開されません。なお、レビュードラフトのサンプルが https://www.w3.org/2019/01/whatwg-w3c-sample.html にあります。


Normative referencingのセクションでは、あるW3C仕様のReferenceからHTMLやDOMを参照するとき、WHATWG Living Satndardを参照するように定められています。

Transition Planのセクションでは、W3CがHTML 5.3とDOM 4.1の開発を中断するとあります。レビュードラフトがW3C勧告になったときに、少なくともW3C HTML 5.1、5.2とDOM4はSupersededとマークされます(すでにそう変更されているHTML 5.0も覚書には含まれている)。対象とされるW3勧告は次のとおり:

あわせて、レビュードラフトがW3C勧告になったときに、次の勧告ではないW3C文書は、(技術的な内容がなく、WHATWG標準を参照するように書かれた)W3Cワーキンググループノートとして再発行されます。

あわせて、WHATWGで発行されているW3Cの文書について、HTMLとDOMの一部ではない次の文書について、SupersededとマークまたはW3Cワーキンググループノートとして再発行されます。

Forkingのセクションでは、W3CWHATWGの両方のライセンスのもとでは、派生物を作ることができますが、この覚書はそのような派生物の作成を避けることにある、とされます。

まとめ

当時のWHATWG HTMLのEditorだったHixieことIan HicksonがW3Cと袂をわけたのが2012年7月*1ですから、7年の歳月を経てようやくW3CWHATWGの仕様の並立状態が解消されるマイルストーンまできました。Draft Charterどおりにことが進めば、2020年の第1四半期にはレビュードラフトをW3C勧告にしたいとのことですから、次のオリンピックまでにはW3C上のHTMLとDOM文書のステータスに決着がついているという展開もそれなりに期待できそうです。

というわけで、W3C HTMLとDOMのことは忘れましょう。WHATWG HTMLとDOMのみを参照しましょう。

おまけ

なお、HTML 5.0とそれ以前のHTMLに関するW3C勧告は既にすべて、Superseded Recommendationとして2018年3月に廃止されています(下記のリンクリストを辿れば一目でわかります)。当ブログの2017年8月付けのエントリーW3C HTML 5.0仕様とそれ以前の(X)HTML仕様に対する廃止勧告の提案、および2018年3月付けのエントリーさようなら W3C HTML5.0仕様ももしかしたら参考になるかもしれません。

WCAG 2.2の策定作業が始まっていた

年度末であまりチェックしていなかった隙に、WCAG 2.2の策定開始作業のコンセンサスが取られていた模様。
WikiのページWCAG 2.2 working processからは、a href="https://docs.google.com/spreadsheets/d/11ikqjrfvkrd2dafuiyc5whhb3yiyxvsiirwct7kqib0/edit#gid=0"Potential WCAG 2.2 SCsという名前のGoogleスプレッドシートへのリンクが張られている。どうやら他のタスクフォース等の要求事項一覧らしく、新しく達成基準が増えるとすれば、ここからということになるのだろうか。GitHubのissueではWCAG 2.2のラベルが既に作成されており、議論を俯瞰することもできる。

WCAGの新たな達成基準策定となると、これでまたUnderstanding/Techniquesへのリソースが削がれてしまうのかもしれない。それ以上に、WCAG 2.1の勧告から半年以上経ってもUnderstanding/Techniquesは依然としてTRの配下になく、もうTRの配下に置く気がないのでは?という予感もしてきている。