(メモ)ウェブアクセシビリティについて、改正障害者差別解消法はいったん脇に置いた方がいいんじゃないかみたいな話。

ウェブアクセシビリティにフォーカスを当てたいときに、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)でもって、「合理的配慮」(義務)の事前的改善措置としての「環境の整備」(努力義務)という論法がわかりにくすぎると思っており、だからこそ不正確な話が出てくると思うんですよね。

なので、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)でもって話を進めるのがいまのところはシンプルなんじゃないですかね。通称にアクセシビリティって入ってますし。

(事業者の責務)
第五条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、障害者がその必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができるようにするよう努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策に協力するよう努めなければならない。

(障害者差別解消法の「環境の整備」と同じ)努力義務であって、だから何がどうなるというわけではないのですけども、ウェブにおける"障害者が必要とする情報を十分に取得、利用できるようにする"というのは、ウェブアクセシビリティのことと解釈できるわけです。この法律にもあるとおり努力義務としてがんばりましょう、で今のところはいいと思うんですよね。まあ、がんばりましょうというかけ声だけで、何をどうがんばるのかというのは(やっぱり法律上は)ひとことも書かれてないわけなんですけども*1

このあたりが高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律バリアフリー法)と比較して、とても物足りないですよね(例としてバリアフリー法だと、法令で指定する建築物にはスロープを設けて、スロープの勾配角度はここまで、というのが定められている*2)。情報アクセシビリティに関しては、理念法だけは謎に存在するんですよねぇ…。たとえばユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律とか。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(中略)
三 ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策 全ての障害者、高齢者等が、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、障害者、高齢者等の自立した日常生活及び社会生活が確保されるようにするために、ユニバーサル社会の実現に関する国際的動向を踏まえ、次に掲げる事項を達成することを目指して行われる諸施策をいう。
(中略)
ニ 障害者、高齢者等が、円滑に必要な情報を取得し、及び利用することができること。

(ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の策定等に当たっての留意)
第八条 国及び地方公共団体は、ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の策定及び実施に当たっては、次に掲げる事項に特に留意しなければならない。
(中略)
四 障害者、高齢者等の言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段並びに情報の取得及び利用のための手段を確保すること。

まあ、対象が行政なので、だからどうしたって感じですけど。というか障害者基本法では、

(情報の利用におけるバリアフリー化等)
第二十二条 国及び地方公共団体は、障害者が円滑に情報を取得し及び利用し、その意思を表示し、並びに他人との意思疎通を図ることができるようにするため、障害者が利用しやすい電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の普及、電気通信及び放送の役務の利用に関する障害者の利便の増進、障害者に対して情報を提供する施設の整備、障害者の意思疎通を仲介する者の養成及び派遣等が図られるよう必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、災害その他非常の事態の場合に障害者に対しその安全を確保するため必要な情報が迅速かつ的確に伝えられるよう必要な施策を講ずるものとするほか、行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進に当たつては、障害者の利用の便宜が図られるよう特に配慮しなければならない。
3 電気通信及び放送その他の情報の提供に係る役務の提供並びに電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の製造等を行う事業者は、当該役務の提供又は当該機器の製造等に当たつては、障害者の利用の便宜を図るよう努めなければならない。

というのがあり。昭和45年(1970年!)から「情報の利用におけるバリアフリー化」というコアなところはそもそも存在して、平成23年(2011年)の改正で加筆されたものの、障害者基本法の枠組みとしてはまあ変わらないよね、という。ただ、障害者基本法の第22条3から、障害者アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の第5条でアクセシビリティやっていきましょうというのは拡大されたようにも見えるので、前進もとい漸進しているといえばそうなのかもしれません。

障害者アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の10条には次のようにありますので、まあ情報、とくにウェブアクセシビリティについて具体的になにをどうしましょうという、バリアフリー法と対になるような法律を作りましょうといういつもの締めということで*3

(法制上の措置等)
第十条 政府は、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

*1:それはそれとして、国の施策に協力するように努めよとしれっと書いてあるのはこれは…って感じがしたりしなかったり

*2:ちょっと古いですけどハート のあるビルをつくろうあたりが参考になるでしょうか

*3:芸がない…