笑えない「サイト接続のコンプラ問題」、The Valuable 500とアクセシビリティと。

小室圭さん、米NY州弁護士会の論文コンペで優勝…「サイト接続のコンプラ問題」 https://www.yomiuri.co.jp/national/20211022-OYT1T50167/

くだんの論文のタイトルは“Compliance Problems in Website Accessibility and Implications for Entrepreneurs”で、まあアクセシビリティなわけなんですけれども、ここで読売新聞で「接続」と来ました。

用語を呼んでもらえなかったのはいざ知らず、不正確な漢語を当てられてしまった2021年の秋、皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて、世界経済フォーラム、まあダボス会議と呼んだほうがしっくりくるのかもしれませんが、2019年のダボス会議でThe Valuable 500(V500とも略される)というものが発足しました。それはなんぞやという説明ですが日本財団のプレスリリースいわく、

V500は、2019年1月に開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で発足した、障害者が社会、ビジネス、経済における潜在的な価値を発揮できるような改革を、世界500社のビジネスリーダーが起こすことを目的とした、世界的なネットワーク組織です。

とあります。ここには署名した日本企業の39社も書かれているんですが、どうやら読売新聞東京本社も参加しているとのこと。ちなみに、読売新聞オンラインは、読売新聞東京本社が運営しているらしいです。出典: Wikipedia

ところでアクセシビリティという言葉ですけれども、アクセシビリティ(accessibility)とは - IT用語辞典 e-Wordsいわく、

高齢や障害、病気などで運動・視聴覚機能に制約があっても、機器やソフトウェアの操作、情報の入手、利用などが可能である状態を意味する。

とあります。まあV500の言うところの障害者と関わりのある言葉というわけですね、はい。

報道機関としてこれまでに、新聞報道を通じて障害者福祉制度の在り方、社会が取り組むべき課題などを幅広く問いかけ、障害者に優しい社会の実現に向けて啓発を続けてきましたが、さらに推進していきます。

読売新聞東京本社はThe Valuable 500のコミットメントというものを出しております。

まあ世間の注目も「人」にありますし、障害者というところに縁遠い報道ではあるわけなんですけれども、神は細部に宿るとも言うわけでして、そういったところに気を配ってもらいたかったなあ…とまあそんな感じです。

アクセシビリティのわかってる人を育てるにはどうすればよいのか的な、とっちらかったやつ

殴り書きです。

というころから、昨日ゆうてんさんとTwitterスペースで喋ってたりしました。

でまあ、ひとつ思ったのはトップダウンの力が日本はまだ弱いと思っていて、それは結局法律というところに集約されていくのでは、と。

みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)には、

2.2.2. 障害者差別解消法を踏まえて求められる対応

合理的配慮

障害者差別解消法を踏まえて求められるウェブアクセシビリティに関する主な対応は以下のとおりです。

(1) 環境の整備

ウェブアクセシビリティを含む情報アクセシビリティは、合理的配慮を的確に行うための環境の整備として位置づけられており、(以下省略)

とまあ、合理的配慮について法改正もあって昨今結構クローズアップされてるわけですけども、その前段階の環境の整備ってところなんだよ、というのは強調しておきたいところかなあとか。

で、その環境の整備ってところについては、2021年7月30日JDC/JEPA共催『デジタル社会に必要な情報 アクセシビリティ』講演会記録石川先生の講演のスライド36がとくにわかりやすくって(下記画像でお借り)、結局のところ情報分野の環境整備の法律がごっそり抜け落ちてるわけなんですよね。ちなみにこの石川先生の講演は勉強になりました、資料を読ませてもらっただけですけど。1

情報アクセシビリティ法が必要 環境整備と合理的配慮は車の両輪 差別解消法の対象となる 以下表形式:交通・建物 環境整備 移動円滑化法、交通・建物 合理的配慮 差別解消法、交通・建物 環境整備 空欄、交通・建物 合理的配慮 差別解消法。空欄に情報アクセシビリティ法

そういうことを踏まえて、国会図書館の出してるEU のアクセシビリティ指令を読んでいくとまた違った光景が見えてるんじゃないかなとか。まあ、EU指令を取り込めばいいってものでもないと思いますが。

で、そのスライドで言うところの、「交通・建物」の「環境整備」にあたる円滑化法というのはなんぞやという話ですが、正式名称は高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律というものであり、バリアフリー新法などとも呼ばれてたりします。これはなんぞやというのは、あんまりいい資料が見繕えないですけど、内閣府の解説ですとか、国交省のリーフレットなんかがオフィシャルな説明になってきます。

もっと平たく言うと、来宮駅バリアフリーの話題なんか2が今年の春にあったのは記憶に新しいですけどもされはさておき、例えば、鉄道の駅には点字ブロックやエレベーター、ホームドアを整備しましょう、図書館や映画館、百貨店などといった特定の建物ではスロープを設けるようにしましょう、通路は車椅子でもすれ違えるようにしましょう…というような基準が法律なり政令なりで定められているわけです。

その一方で少なくともウェブサイトにフォーカスを当てれば、法令という意味では野放図だったりします。リアルワールドには、公共の施設や一定の利用者が見込まれる施設にはエレベーターを付けるように世の中のルールで決まっているのに、ウェブにはエレベーターに相当するようなもの3を付けるような決まり4はないわけですよ5。果たして本当にそれでいいんですか?と。

とまあ難しいこと言ってますけど、アクセシビリティを意識している人を育てるにしても需要がないとね?みたいな。あと、セキュリティとかUX/UIに比べたら日本での世の中的には存在感がいまいちな気はしてます(?)


もうひとつはそうは言ってもボトムアップの力が一方で要求されてくるわけで、まあここからがこの記事のタイトルというか、多分読者各位はこっちのほうを期待して読みに来たんだと思うんですけども、デザイニングWebアクセシビリティだけじゃやっぱり足りないよねというか。

本書が出たのが2015年なわけですけども、当時と比べるとオフィシャルな情報源と言えるW3C WAIのリソースが格段に増えてたりします(一部は昔からあったりしますが、WAIのサイトもリニューアルされてぐっと見やすくなってたりします)。

Get resources for…では、コンテンツライター、デザイナー、開発者…といった各ロールごとにこういうリソースがありますというような案内があって(Resources for Designersだとこんな感じ)、 たとえばTips for Getting Started Designing for Web Accessibilityなんかですと、UIとかビジュアルデザインでこういうところを気をつけましょうみたいなことが書いてありますよと(英語ですけども、画像がちょこちょこあるので、雰囲気はなんとなく掴めるかなと)。あとはIntroduction to Web Accessibilityというアクセシビリティの概要みたいなリソースも当然あったりします。

で、Introduction~のページを見てもらうとわかると思うんですけども、Languages/Translationsというところで他言語版があったりします。まあ今のところは日本語版はなかったりするんですけども、翻訳版をW3Cでホストしてくれるわけですね。例えば簡体中国語版とかだと冒頭に訳注がのかってて、訳者の名前とか出せるんですね…へー(?)

とまあ、WCAG 2の本当に解説になっているのかよくわかんない解説書とかを読むよりかは前述のWAIのリソースを当たってもらう方がまだよいのかなとか思っていたりします。リンクを張っているわりには実は読み込めてないので本当に顧客が欲しかったもの()なのかまでは見極められてませんが、ともかくそれなりに信頼できるリソースがそこにあるわけですから、冒頭のゆうてんさんの「アクセシビリティエンジニアのインターシッププログラム」をもし組むとするならば、まずはこのWAIのリソースを踏まえた上で組み立てていくのかなーとかぼんやり思ってたりします。

とまあそんなところでとりとめのないお話でした。最後にゆうてんさんのまとめたものをはっておきます。


  1. それはそれとして、2021年にもなって右クリック禁止とか最高にロックですよね

  2. あまりにもアレなのでぼかしてますけど、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E6%98%AF%E5%90%8D%E5%A4%8F%E5%AD%90 になぜかご自身のお名前でまとまってますね…ただしWikipedia

  3. ウェブ屋から見ればウェブページの画像の代替テキストとかそういう

  4. 読者はご承知のとおり、WCAGとか技術基準は当然あるわけですけども

  5. というのが自分の理解なんですけども、誤りありましたらご教授いただければと