コピペ:デジタル社会の実現に向けた重点計画(2021年)

デジタル社会の実現に向けた重点計画
令和3年(2021年)12月24日

令和4年(2022 年)の年央を目途に、この計画をバージョンアップさせた、次期の重点計画を策定することを目指すこととする。


第2 デジタルにより目指す社会の姿
4.誰一人取り残されないデジタル社会

① 利用者の視点を第一に、UI・UX、アクセシビリティに最大限配慮したデジタル機器・サービスを利用シーンに応じ、様々なニーズも踏まえ、次のようにきめ細かく提供すること。
・デジタル機器等に不慣れな人にも分かりやすく、使いたくなる UI・UX のデザイン思考を追求すること。
・単一障害専用ではなく、重度・重複障害も意識した複数障害に対応するとともに、サイロ化せず汎用性を確保したデジタル機器・サービスとすること(汎用的機器との API 連携の促進等)。
・デジタル機器・サービスに不慣れな人のほか、機器等の利用が困難な人や利用しない人も、窓口での行政手続の負担軽減を始め、デジタル化の恩恵を実感できること。
② 高齢者や障害者に対してデジタル機器・サービスの利用を支援する場合、機器等の操作方法等とともに、機器等で何ができて、どのような課題を解決できるかを分かりやすく情報共有すること。
③ 障害者を対象とするデジタル機器・サービスのアクセシビリティ確保は、高齢者のフレイル対策1、社会参加に資するのみならず、こどもを含む幅広い国民一般にその利便性が裨益するものであり、新たなイノベーション創出や市場形成に繋ながること。
④ デジタル市場自体は国際性を内包していることから、アクセシビリティに係るガイドラインやその実効性の確保に関し、法的措置も含め、国際的な整合性を図りつつ対応すること。また、そのことが我が国企業等による関連技術やアイデアを生かした国際競争力の強化にも繋がること。
⑤ デジタル化のメリットのみならず、SNS 等を通じた誹謗中傷、社会の分断化等の負の影響についても社会全体として情報共有を促進し、国内外を問わず、安全・安心なデジタル社会を実現していくこと。


「皆で支え合うデジタル共生社会」の環境整備に向けた具体的な施策
① まず、国や地方公共団体等が提供するサービスについては最優先で取り組む課題であり、様々な利用者を想定したデザイン思考を導入する。このため、デジタル庁にサービスデザインに関する職員の意識改革、専門人材(障害当事者を含む。)の活用等によりサービスデザイン体制を確立するとともに、政府のウェブサイトやシステム調達ガイドラインにおいても政府統一のアクセシビリティ基準の策定等の実効性ある措置を講じることが必要である。その上で、これらの取組について地方公共団体等に横展開を図っていくこととする。
② 国や地方公共団体等におけるウェブサイトやデジタル機器・サービスのアクセシビリティガイドライン等の策定に当たっては、利用者に分かりやすい内容とし、技術の進展に柔軟に対応して見直すとともに、欧米の情報アクセシビリティに関する法規制等の動向も踏まえ、その実効性確保について国際的な整合性の観点からも検討が必要である。
③ 政府等は汎用性を確保したアクセシビリティ対応のデジタル機器・サービスの開発を促進する観点から、UI・UX、アクセシビリティに対応する企業等に対する支援措置を講じる。その際、視覚障害聴覚障害のほか、知的障害、発達障害、身体障害、重度・重複障害も含め、様々な障害の種類・程度に応じた開発が促進されるよう配慮することが重要である。
アクセシビリティ関連情報を企業・団体利用者等が幅広く共有できるよう、どのような機器・サービスが存在し、どのようなニーズに対応しているのか等、マッチングのためのデータベースを幅広く構築することが必要である。
(中略)
⑩ その他、病院、リハビリセンター等における通信環境(Wi-Fi等)の整備や、在留外国人に対するやさしい日本語の活用の拡大、地方公共団体等での多言語翻訳対応の促進等、生活シーンに応じて求められる情報へのアクセシビリティの確保についても、官民が協働して推進していくことが重要である。


第4 デジタル社会の実現に向けての理念・原則
1.誰一人取り残されないデジタル社会の実現

このような観点から、利用者視点に基づくサービスデザイン体制を官民挙げて確立しつつ、デジタルデバイドの是正やデジタル機器・サービスに係るアクセシビリティ環境の整備(地理的な制約、年齢、障害の有無等の心身の状態、経済的な状況その他の要因に基づく高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用に係る機会又は必要な能力における格差の是正)2を促進するため、以下の取組を推進し、国、地方公共団体、企業、国民等が皆で支え合うデジタル共生社会を実現していく。

① 利用者視点でのサービスデザイン体制の確立
官民挙げて利用者視点でのサービスデザイン体制を確立していく観点から、特に、行政機関等が提供するサービスにおける UI・UX、アクセシビリティを確保することは喫緊の課題であり、行政機関等には、各種サービスの検討段階から多種多様な利用者を想定したデザイン思考に基づく対応等が求められる。
② デジタル機器・サービスに係るアクセシビリティ環境の整備
令和3年度(2021 年度)以降、政府等の公的機関のウェブアクセシビリティの確保の取組を強化する。視覚・聴覚のみならず、知的障害も含め、様々な障害の種類・程度や利用者側のニーズとデジタル機器・サービスの開発を行う企業等のシーズのきめ細かなマッチングを実現するとともに、具体的な障害者向けデジタル機器・サービスに関する情報共有(当該機器・サービスを活用し、障害者や高齢者等を支援する場合の支援方法等を含む。)のための関連情報のデータベースの整備及び利用促進を図る。
視覚・聴覚障害者向け会議支援システム等、障害者、高齢者等の利便の増進に資するデジタル機器・サービスの研究開発の推進及びその普及を図る。
視覚障害者等が電子書籍を利用するための端末機器等の研究開発の推進や導入支援を行う。
放送事業者等に対し、字幕番組、解説番組、手話番組等の制作費や生放送番組に対する字幕付与設備の整備費を一部助成することにより、視聴覚障害者向けテレビジョン放送の充実を図り、放送を通じた情報アクセス機会の均等化を実現する。
企業等が開発するデジタル機器・サービスが情報アクセシビリティ基準に適合しているかどうか自己評価し、公表する仕組み(「日本版 VPAT」)等の普及展開を引き続き推進するとともに、政府情報システムに係る調達において「日本版 VPAT」の取組についても評価できる仕組みの導入に向け、「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン3を改定する。

③ 皆で支え合うデジタル共生社会の実現
高齢者等が、身近な場所で身近な人からデジタル機器・サービスの利用方法を学ぶことができる環境作りを推進する「デジタル活用支援」事業に重点的に取り組み16、これまでのデジタル活用支援員による全国の携帯ショップや地域の ICT 企業、社会福祉協議会、シルバー人材センター、公民館等での講習会等の実施の成果を踏まえつつ、更なる質・量の向上を図り、地方公共団体教育機関等とも密接に連携し、地域のサポート体制を確立し、幅広い取組を国民運動として促進するとともに、このような取組を定着させるための方策を検討する。また、このような取組の成果等も踏まえ、「デジタル推進委員」に係る制度の在り方について検討する。
また、講習会の参加者へのアンケート結果等も踏まえ、「デジタル活用支援」の取組(デジタル機器・サービスの操作方法等のみならず、マイナンバー制度を始め、デジタル化により実現されるサービスに関連する知識の習得も含む。)や支援方法の周知広報を強化するとともに、オンライン行政手続に係る UI・UX、アクセシビリティに関する課題等を把握し、デジタル庁におけるサービスデザイン機能の更なる向上に繋なげる(PDCAサイクル)。


  1. 年齢を重ねることで身体や心の働きが低下し要介護に近づきつつある状態(フレイル)を予防・改善するための様々な取組をいう。

  2. デジタル社会形成基本法(令和3年法律第 35 号)第8条(利用の機会等の格差の是正)、第 23 条(高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用の機会の確保)及び第 24 条(教育及び学習の振興)等

  3. 令和3年9月10日デジタル社会推進会議幹事会決定

公共系のウェブアクセシビリティの要件定義を考えるみたいな話から行政への働きかけ云々

散らかってる上に、読み返してないのでおかしな文章になってるかもですが。

さておき、少し前ですけどなんかのイベントで雑談する機会があって、地方自治体の仕様書が斜め上でアレって話を聞いた記憶があるんですけども。例えば公共系の巷によくある文字サイズを変更するボタンとか、あれぶっちゃけ仕様書に入っちゃってるんで、どうしようもない的な怨嗟の声とか聞いたことがあった気がするんですけども、結局もっと上のレイヤーでそういう文言が入っちゃってるからそうなると考えるわけで。

たとえば、平成29年(2017年)3月に発行されている国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針というのがありまして、これはまあ障害者差別解消法で定めるところの基本方針に基づいて、事業者が適切に対応するために必要な指針というものが出されるわけです(法第11条)

その中には【航空運送業関係】として

(2)合理的配慮の提供の具体例
① 多くの事業者にとって過重な負担とならず、積極的に提供を行うべきと考えられる事例
・ WEBサイトにて、障害のある利用者用の情報を分かりやすく掲載するとともに、音声読みあげ、文字拡大機能をつける。

とまあ、JIS X 8341-3:2016から考えるとまるで無意味な機能が紛れ込んでいるわけです。

これは、みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016 年版)の2.1.4. ウェブアクセシビリティ対応に関する誤解で名指しで批判されているものでもあると。

注意点!
ホームページ等において、音声読み上げ、文字拡大、文字色変更等の支援機能を提供する事例がありますが、これだけでは、ウェブアクセシビリティに対応しているとは言えません。
利用者は、多くの場合、音声読み上げソフトや文字拡大ソフトなど、自分がホームページ等を利用するために必要な支援機能を、自身のパソコン等にインストールし必要な設定を行った上で、その支援機能を活用して様々なホームページ等にアクセスしています。つまり、ホームページ等の提供者に求められるアクセシビリティ対応とは、ホームページ等においてそのような支援機能を提供することではなく、ホームページ等の個々のページを JIS X 8341-3:2016 の要件に則り作成し提供することにより、利用者がそのページを閲覧できるようにすることです。

(事業者向けの)対応指針という法に基づいて定められる文書が、総務書の出す(公共サイト向けの)ガイドラインと見事に噛み合ってないという素敵な事態が現に起きてるわけですね。すごい。

話はガラッと変わって、今はデジタル庁に取って代わられた内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室が2019年4月にWebサイトガイドブックというものを出しているんですけど、このガイドブックというのは

本ガイドブックは、Web サイトのデザイン、Web サイトの構造、情報収集を容易にするためのタグの統一等、利用者視点での情報提供を行うため、政府のWeb サイトにおいて留意すべき事項を示したものであり、(以下略)

とまあ、Webサイトの留意事項を並べていると。ここで「5.2 対応すべき技術標準」「1) HTML5 / CSS3」というセクションがあって、

Web サイトを構成するページの内容や体裁情報の記述においては、一般的なWeb ブラウザがサポートする標準技術である HTML5/CSS3 注記)を用いることを推奨します。 注記)HTML5/CSS3 の仕様は、次の URL を参照してください。
HTML5: https://www.w3.org/TR/html/
CSS3: https://www.w3.org/TR/?tag=css&status=rec&version=latest

まあ、HTML5というのはとりあえずよしとして、CSS3という公式には存在し得ない怪しい文言が政府文書にも関わらず躍り出ていますが、それ以上になんだこの参照URLは。Web仕様に通じている人間がこの文書策定に携わってないことが見てとれるのが恐ろしいですね。

で、あとはデジタル庁の会議資料とかまあ全然ちゃんと追いかけられてないんですけど、2021年12月8日に開催された第3回デジタル社会構想会議資料2:自治体職員有志チーム提出資料(「誰一人取り残さない人に優しいデジタル化」のために)というのがあったりするんですけど、ここにアクセシビリティの観点の文言は一切出てこないどころか、シビックテックとかいう大層な文言で「東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト」の事例が出されてるわけですけども、現場はカネを出さないという意思表示と捉えてよいですかね。この資料を読む限りでは、現場職員は情報アクセシビリティという観点に欠けていると言わざるを得ないのではないでしょうか。非常に心配ですし、「誰一人取り残さない」というのがあさっての方向に向いてるように感じるのは気のせいでしょうか、まあそういうことを主眼に置いた文書でもないのでしょうが。

まあちょっと脱線しましたけども、ウェブアクセシビリティというかJIS X 8341-3:2016、もといWCAG 2.xをベースにして、ウェブアクセシビリティを推し進めていくのがよろしかろう、と個人的には考えているのですけども、現状はそういう流れとはほど遠いと感じます。とりわけ障害者差別解消法で定める対応指針にWCAG観点でおかしな文言が入らないようにすることは重要なポイントかと思います。ここがしっかりしていないから公共調達で現場に即していないような要件定義が紛れ込んでくるわけですから、技術的におかしな方向にならないように、しっかりと意見を具申しなければならないかと。そのためにも、現状把握が急務でしょう。

(メモ)2022年にあわてないための障害者施策動向でも書いたように、対応指針の元になる基本方針は来年夏に決まるというスケジュールであります。基本方針の閣議決定は決まったものを承認するプロセスにしかすぎないわけですから、それより手前で基本方針に何らかねじ込むとしたら、もう時間がないか、すでにタイムオーバーしているかもしれません。

令和3年(2021年)12月13日第60回 障害者政策委員会資料2 基本方針改定に係る事業者団体等からの意見一覧(前半ヒアリング分)に一般社団法人 日本書籍出版協会からのヒアリングが載っているんですけども、テキストデータがーとか斜め上のことを言っていて、EPUBのEの字も出てこないわけですよ。そりゃあまあ紙に印刷するというのが第一なんでしょうけども、電子書籍とか全然頭にないんでしょうねえ…。

あとは、同じく第60回 障害者政策委員会の資料8 障害者基本計画(第5次)の検討に向けた意見の整理・課題等について(案)なんかは、アクセシビリティの文字こそ躍っているものの、ハード面の話が多く、ソフトの話が入っているとしてもアプリが主だったりするわけで

(2)情報アクセシビリティの向上及び意思疎通支援の充実[基本法第 22 条関係、条約第9,21,24 条関係]
ICTを始めとした新たな技術を利活用する際のアクセシビリティへの配慮について(利活用時の当事者参画を含む)
障害の種類によってはサービスが利用できなくなる事態が生じているが、そうした場面におけるアクセシビリティについて、どのように改善しようとしているか。
キャッシュレスや緊急通報アプリのアクセシビリティ向上に係る取組状況を教えてほしい。
アプリについて、盲ろう者にも使えるよう、開発段階から関与させるべき。ワンタイムパスワードや顔認証など、盲ろう者が使いこなせるように開発してほしい。スマホタブレットなど、見える人にとっては便利かもしれないが、盲ろう者等にとっては非常に使いにくい。

ウェブアクセシビリティという文言が直接出てこないことを憂うべき事態だと思うのです。

でまあ、いろいろと書き連ねてはみたんですけども、何をするにもやっぱり現状把握っていうのが大事だと思うんですよ。政府の文書や議事録を漁るというのも到底一人じゃ作業しきれないわけだったりするんですけども、それはそれとして、改正障害者差別解消法の施行に向けて行政に対してウェブアクセシビリティ界隈として何らかの仕込みをする必要があると感じています。というわけで、こういう政策方面に興味のある方誰かいませんかね。一人で考え込んでもしょうがないと思うので、興味のある人と話がしてみたいです。