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「縦書き」に関する総務省の行政事業についての報告書の感想のようなもの

「縦書き」に関する総務省の行政事業に関して情報開示請求をした(しただけ) - 水底の血

5月に書いたきりでそういえば中身について何もブログには記してなかったな、と。間があいてしまったのは、筆者が他のことにかまけていた以上に、情報開示した報告書の内容について、そんなに書くこともないな、と言うことに尽きるとかと。

とは言っても、何も書かないわけにもいかない(風呂敷を広げた以上、このブログの訪問者の中には、一体全体どんな内容だったのか気になるという人いると思われる)ので、簡単にその中身を紹介する形式にしておこうと。(おさらいであるけども)ちなみに今回開示請求をかけたのは次の3点。

平成25年度「次世代ブラウザ技術の標準化に向けた相互運用性の確保に関する調査」報告書
作成者:エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
平成26年度「次世代ブラウザ技術を利用した日本語等に特有の表現方式の標準化に向けた調査検討の請負」報告書
作成者:エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
平成26年度「次世代ブラウザ技術を利用した縦書きテキストレイアウトコンテンツの再現度評価に関する調査検討の請負」報告書ならびに再現度評価に用いた電子ファイル一式
ビヨンド・パースペクティブ・ソリューションズ株式会社


全部書き記すのも面倒なので、このうち、H26年度報告書についてざっくりとみていきたい。報告書本編の目次については次のとおり。

1 調査検討概要
1.1 件名
1.2 目的
1.3 調査検討項目
1.4 調査検討の実施内容
2 次世代ブラウザ技術を利用した日本語等に特有の表現方式の実現に必要となる技術規格の概要及び標準化動向調査
2.1 次世代ブラウザ技術を利用した日本語等に特有の表現方式の実現に必要となる技術規格の概要
2.1.1 次世代ブラウザ技術を利用した日本語等に特有の表現方式の整理
2.1.2 日本語等に特有の表現方式の次世代ブラウザにおける技術仕様と実装状況
2.1.3 教科書関連書籍にて利用される日本語等に特有の表現方式
2.2 次世代ブラウザ技術を利用した日本語等に特有の表現方式の実現に必要となる技術規格の標準化動向
2.2.1 W3C (World Wide Web Consortium) 
2.2.2 IDPF(International Digital Publishing Forum) 
2.2.3 関連する技術規格の標準化を推進するために求められる方策の検討
3 次世代ブラウザ技術を利用した縦書きテキストレイアウトに関する仕様の標準化に関する意見交換会の実施
3.1 次世代Webブラウザのテキストレイアウトに関する検討会の概要
3.1.1 本検討会の議論内容
3.2 次世代Webブラウザのテキストレイアウトに関する検討会 電子書籍関連分科会の概要
3.2.1 本分科会の議論内容 
3.2.2 その他分科会活動
4 標準化提案活動の実施
4.1 W3C CSS F2F Sophia-Antipolis 2014
4.2 W3C TPAC 2014(CSS WG Group Meeting)
4.3 W3C CSS F2F Sydney 2015(CSS WG Group Meeting)
4.4 HTML5(Ruby)に関するテスト項目の体系的な整理と貢献
4.4.1 テスト項目の体系的な整理
4.4.2 テスト項目に関する貢献
4.5 Writing Modesに関するテスト項目の体系的な整理と貢献
4.5.1 テスト項目の体系的な整理
4.5.2 テスト項目に関する貢献
4.6 縦書きWebサイト情報のまとめwiki作成
5 おわりに

このうち2.1.1についてはJLREQ(日本語組版処理の要件)の該当箇所からのコピペである。JLREQは偉大である。
2.1.2には仕様と実装状況が解説されているが、ここには仕様の進捗状況(たとえばWorking Draftといった仕様の成熟度合い)が一切示されておらず(ただし2.2.1.2には示されている)、またブラウザーの名前、ChromeやInternetExplorer(報告書ママ)という名前は出てくるが、どのバージョンで確認したのかというような情報は記載されていない。
2.1.3は実際に光村図書出版と東京書籍にヒアリングしたようで興味深いが、例えば光村は「小学一年生でのみ使う機能、漢字レ点と言ったレアな機能についても標準化されると助かる」などということを述べており、そういうのは自分たちでプロポーザルを作るんだよと言うのを誰か教えてあげてください、みたいなことを思ったり。また、東京書籍は「Flashはツール、プログラマと環境が整っていることが大きい。HTML5(EPUB)では、数式、ルビ、化学式といったものの表現が困難だった。」などと述べており、2014年にもなってflashかよといった感想を抱いたり、「「国語」の教科書については特に禁則処理など注意深くレイアウトを行っており、教育面での厳密さは現状の電子書籍、Webブラウザが及ぶところではない。「音楽」はまた必要となる表現要素が違う。その他教科毎の違いが大きい」そりゃあ五線譜引くのは別なんじゃあなどと。


2.2.3はまるごと転載

「表2-15 標準化に向けた検討状況」にて取りまとめている通り、HTML5(Ruby)を除き、2015年度にて最終段階である”Recommendation”に至った仕様は存在していない状況である。この状況を踏まえつつ、推進するための方策について本節で纏める。
まず、これら関連する技術規格の標準化を進めてきたこれまでの経緯について述べる必要がある。本取組における、日本語等に特有の表現方式に関する仕様の検討については、Webブラウザベンダに直接仕様策定に関われる人材が豊富でなかったという状況があった。そのため、後述する意見交換会である「次世代Webブラウザのテキストレイアウトに関する検討会」から、日本語等に特有の表現方式について見識のある人物が標準化活動に関わり、仕様策定を進めてきた。
この状況が、同じくW3Cで仕様策定が行われている他の仕様と大きく異なる。他の仕様では、仕様策定に関わるメンバがWebブラウザベンダから参加しているケースが多い。そのため、出身母体であるブラウザベンダと仕様策定作業の連携が密に行われる状況が出来ている。特にW3Cの仕様策定においては、「独立した2つ以上の実装により仕様が実現されていること」が条件となっていることから、このような推進体制が取られていることは大変大きなメリットとなる。
しかし、先述の通り、日本語等に特有の表現方式に関する仕様検討については、そのような体制が取れておらず、Webブラウザベンダの関わりが薄い状況のまま仕様策定が実施されてきてしまった。そのため、仕様単独での検討が行える”Candidate Recommendation”ステータスまで進みつつも、その後停滞している状況である。Webブラウザベンダによる、仕様実装への対応と、その実装をテストにより確認することが必要である。
この点を踏まえると、まずWebブラウザベンダに対して、日本語等に特有の表現方式に関する仕様を実装することがブラウザシェアを獲得する上で有意義なものであることを認識してもらえるように働きかける必要がある。
そのための方策として、本年度の取り組みの中でも作業の着手が行われているが、
・ 日本語等に特有の表現方式へのWebブラウザの対応が、コンテンツ作成者、利用者のニーズがある事項であることをアピールする
・ その上で、テスト整備を進めることで日本語等に特有の表現方式へのWebブラウザの対応状況を可視化し、各Webブラウザベンダに対応を急ぐ必要があるとの認識を持ってもらう。
ことが有効ではないかと考える。

…果たしてこのような認識でよいのでしょうか。i18n (internationalization)という観点から進めないと、やはり国際標準は厳しいのでは*1。Writing ModeにもAbstractで

CSS Writing Modes Level 3 defines CSS support for various international writing modes, such as left-to-right (e.g. Latin or Indic), right-to-left (e.g. Hebrew or Arabic), bidirectional (e.g. mixed Latin and Arabic) and vertical (e.g. Asian scripts).

という具合に、世界各国のさまざまな書字方式のCSSサポートを定義する、と言うようなことを謳っているわけで、別に日本語の縦書きのためだけにWriting Modeがあるということではない、というのがまるっと抜けてるのは総務省向けの報告書といえどもやはりよろしくないのでは。

3ではWebでは何かと謎に包まれている『次世代Webブラウザのテキストレイアウトに関する検討会』の議事概要が示されているわけですが、中身については純粋に技術的観点からと、会員各社の事情的なものが折り混ざっているように見受けられる。とりわけ標準策定に関わるオープンな技術情報をクローズドな場でやりとりしてもあまり意義がないというか、縦書き普及を阻害しているのはその閉鎖性にあるのでは(別に企業固有の積極的に公表すべきでない情報まで公表しろとは言いませんが)。


3.2.2ではブラウザーベンダーへのヒアリングの概要が記載されているけれども、「Blinkの縦書き関係仕様は■■■■がほぼ全て見ており、GoogleとしてもCSS WGの活動はサポートしている。」「Feedbackについては■■■■および■■■■(■■■■)に実施している。標準仕様が確定していない部分は優先順位が下がっている。(Mozilla)」(■■■■は黒塗り)とまあ個人情報の関係で総務省判断でここを黒塗りにされたんでしょうが、こんなところを黒塗りにする意味とかまったくないというか、コンテキストから誰か見当がついてしまうので無意味というか。あとは、「台湾での縦書きの需要はあるのか。日本だけでなく彼らとも連携しているのか。(マイクロソフト)  ruby(Bopomofo)で一定の需要はあり、台湾の電子書籍ベンダがTPACに参加しているが、日本ほど目立った活動はしていない。検討会としても台湾と表立って連携はしていない。(事務局)」とここでもi18nの観点からはやや微妙な返しが出されており、「EPUBの時のように日本ローカルで話が進むのは良くない、同じような枠組みだったら参加の興味が無い。(Mozilla)」というMozilla Japanからの発言が全部なのではなどと。

4については、はCSSWG F2Fの概要で、多分CSSWGの議事録をひっくり返せば英語で出てくるような内容かなと。


まあ、2014年の話とか忘れかけているので、振り返るには意味のある報告書ではありますか。簡単ですがこんな感じで。

*1:まあこの辺を読んでおけばよいかと http://www.xmlmaster.org/murata/xmlblog/xb110320.html