(メモ)W3Cアクセシビリティ成熟度モデルの話

界隈的にはWCAG 2.2 CRが話題になってると思いますけども、WCAG 2.2 CRと同じ日に、ドラフトノートとしてW3C Accessibility Maturity ModelW3Cアクセシビリティ成熟度モデル)という文書が発行されています。

これは何なのか?というのは、この文書のAbstractには次のようにあります。

The W3C Accessibility Maturity Model is a guide for organizations to evaluate and improve their business processes to produce digital products that are accessible to people with disabilities. Use of the W3C Accessibility Maturity Model will provide organizations informative guidance (guidance that is not normative and does not set requirements) on improving accessibility policies, processes, and outcomes.

This document is designed to work for any size of organization, from small to large corporations or government agencies. Additionally, this is intended to be independent of the requirements set forth in relevant technical accessibility standards, such as the Web Content Accessibility Guidelines (WCAG).

Google訳(一部修正)ですとこういう感じ:

W3Cアクセシビリティ成熟度モデルは、組織がビジネス プロセスを評価および改善して、障害を持つ人々がアクセスできるデジタル製品を作成するためのガイドです。W3Cアクセシビリティ成熟度モデルを使用することで、アクセシビリティポリシー、プロセス、および成果を改善するための有益なガイダンス(規範的ではなく、要件を設定しないガイダンス)を組織に提供します。

この文書は、小規模から大規模な企業や政府機関まで、あらゆる規模の組織で機能するように設計されています。さらに、これは、Web Content Accessibility Guidelines (WCAG)など、関連する技術的なアクセシビリティ標準で規定されている要件から独立していることを意図しています。

このように、WCAGとは別物の文書である、と謳っています。なお、この文書の出自ではないですが、1.3 Existing Research and Standardsでは既存の規格として、ISO/IEC 30071-1:2019を挙げています1,2

ちなみに、W3C Accessibility Maturity Model | W3C Blogでは、成熟度モデルが必要な理由について記述されています。

いろいろと書かれていますが、個人的に気になったところを取り上げますと、

  • Accessibility Conformance Reports / Voluntary Product Accessibility Template (ACR/VPAT)は、ある時点で凍結された製品(product)の単一バージョンのスナップショットを調べます。ACR/VPATは、アクセシビリティが繰り返されるかどうかを評価しないため、製品リリースタイムラインの後半でその製品のアクセシビリティについて保証はありません。
  • アクセシビリティ成熟度モデリングは、アクセシビリティ適合性テストとは大きく異なります。
    • 適合性テストは、特定の時点における特定の製品のアクセシビリティ適合レベルに関する情報を提供します。適合性テストの結果は、製品の特定のバージョン(または製品のコンポーネント)の全体像を提供します。
    • 成熟度モデリングは、長期にわたってアクセシブルな製品を生産する組織の能力に関する情報を提供します。成熟度モデリング評価の結果は、組織のアクセシビリティのイニシアチブの全体像―組織がアクセシビリティをうまく行っている場所と、障壁を取り除くために改善できる場所―を提供します。

成熟度モデルの着目点としては、製品(product)をアクセシブルにするだけでは十分ではなく、製品の体験全体をアクセシブルにする必要がある、というところにあります。このようにWCAGを位置付けることで、見えてくるものもあるなと感じているところです。


  1. いつだったか@yomochanが、たしかHassell Inclusionのこのページを通してISO/IEC 30071-1:2019を紹介していた気もします。

  2. というかこのISO、ISO/IEC JTC 1/SC 35ということに気づきました。どうしよう(どうしよう、とは)。