出てました。
- 「国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」の改定案及び「国土交通省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」等の改定案に関する意見募集について(受付締切日時:2023年8月25日0時0分)
- 経済産業省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針(改定案)に関する意見募集について|e-Govパブリック・コメント(受付締切日時:2023年9月1日23時59分)
なぜか国交省はzipで固まってますが、国交省の場合は、zipの中の「01_国交省所管事業 対応指針(案)(新旧対照表)るびなし.pdf」がお目当ての対応指針案ということになります。*1
さて、国交省の対応指針で筆者の目を惹いたものを見てみる前に、この国交省の対応指針とはなんぞや、というところから。
本文(p.11)では、
三 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例 ・ この対応指針は国土交通省所管事業の事業者向けに作成されたものであり、別紙において主な事業に関する障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例を示している。なお、別紙の例以外であっても不当な差別的取扱い及び合理的配慮に該当するものがあることに留意する。
とあります。これはつまり、別紙を見れば、国土交通省所管事業の具体的な事業者がわかる、ということになります。
○ 別紙【航空旅客ターミナル施設事業関係】(p.53)では、
1 対象事業 空港法(昭和31年法律第80号)第15条第1項に規定する空港機能施設事業のうち、航空旅客の取扱施設(以下「航空旅客ターミナル施設」という。)を管理する事業を対象とする。
とあります。航空:空港 - 国土交通省に事業者の一覧が見て取れますが、たとえば、東京国際空港(羽田空港)であれば、第1・第2旅客ターミナル(国内線)を運営する日本空港ビルデング株式会社、第3旅客ターミナル(国際線)を運営する東京国際空港ターミナル株式会社と読み解くことができるでしょう。*2
そして、別紙【航空旅客ターミナル施設事業関係】の続き(p.54)を読んでいくと、旧(現行)指針には、
(2)合理的配慮の提供の具体例 ・ WEBサイトにて、障害のある利用者用の情報を分かりやすく掲載するとともに、音声読みあげ、文字拡大機能をつける。
という何とも言いがたい文言があったわけですが、これは改定案では削除されました。よいことですね。(こういうアレゲな文言が対応指針という法で定められた文書にあると、サイト構築の要件に入ってしまうわけです。なにせ、法で定められた文書に挙げられている具体例ですからね。)
個別具体の話をざっくり触れたところで、本文に戻ってみましょう。
(4)環境の整備と合理的配慮の関係(p.9、p.10)を抜粋してみると、
・ 法は、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(施設や設備のバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)を、環境の整備として事業者の努力義務としている。環境の整備においては、新しい技術開発が投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待される。また、ハード面のみならず、社員に対する研修や、規定の整備等の対応も含まれることが重要である。
・ 合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る一例としては以下の例が挙げられる。
○ オンラインでの申込手続が必要で、ウェブサイトの手続に際しての支援を求める申出があった場合に、求めに応じて代替手段(電話・電子メール・対面等)を提案し、本人の意向を確認しながら対応を行う(合理的配慮の提供)とともに、以後、障害者がオンライン申込みの際に不便を感じることのないよう、過重な負担がない範囲でウェブサイトの改良を行う(環境の整備)。
このあたりの文言は、基本方針にあるものがそのまま記載されるような格好といえるでしょう。
話は変わって、別紙【予報業務関係】(p.63)*3では、
1 対象事業 気象業務法(昭和27年法律第165号)第17条の規定に基づき許可を受けて実施する予報業務を対象とする。
どんな事業者なのかは、Wikipediaの予報業務許可事業者がわかりやすいでしょう。有名どころでは、tenki.jpを運営する日本気象協会ですとか、ウェザーニュースを運営するウェザーニューズなんかが当たると。
で、別紙【予報業務関係】の続きには、
なお、予報業務は、情報通信技術の活用により様々な媒介を通じてサービス提供される形態が主であり、サービス提供における情報アクセシビリティの向上等の「環境の整備」に努める必要があるが、以下では、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25 年法律第65 号)第11 条第1 項の規定に基づき、サービス提供に先だった相談や契約等の場面を中心に「不当な差別的取扱い」及び「合理的配慮」の具体例を示す。
『サービス提供における情報アクセシビリティの向上等の「環境の整備」に努める必要がある』と明言しているところが興味深いな、と。
先に挙げたように、空港は国交省の所管事業なわけですが、鉄道やバス、フェリー(旅客船)も同じく、となります。しかし、そのような文言は見当たりません。バリアフリー整備ガイドラインに情報提供のアクセシビリティ確保に向けたガイドラインとして「ウェブアクセシビリティについて」があるにもかかわらず、です。このあたりにウェブアクセシビリティの存在感の薄さがあるのかな…と感じる次第です。
続いて経産省。対応指針(改定案)新旧対照表が提供されているので、これを見ていきます。
3 対応指針の位置付け(p.1)には、
経済産業省が所管する分野における事業者*(以下「事業者」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めたものである。
* 対象となる事業者は、商業その他の事業を行う者(地方公共団体の経営する企業及び公営企業型地方独立行政法人を含み、国、独立行政法人等、地方公共団体及び公営企業型以外の地方独立行政法人を除く。)であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同種の行為を反復継続する意思をもって行う者である。したがって、例えば、一般社団法人や一般財団法人、公益社団法人や公益財団法人、個人事業者や対価を得ない無報酬の事業を行う者、非営利事業を行う社会福祉法人や特定非営利活動法人も対象となり、また対面やオンラインなどサービス等の提供形態の別も問わない。
これはまあ、現行の対応指針と基本的には変わらないのですが(それはそう)、「対面やオンラインなどサービス等の提供形態の別も問わない。」という文言が追加されているのは1つのポイントでしょう。
第5 経済産業省所管事業分野における相談窓口(p.7)では、
経済産業省所管事業分野に係る相談窓口は以下のとおり。
(所管事業分野に係るもの)
○経済産業省 本省 業所管課室(別表1)
別表1(p.7~9)というものが追加されています。以下にそのまま記載してみましたが、実に多岐にわたりますね。
事業分野 | 相談窓口 | |
---|---|---|
製造業 | 印刷業 | 商務情報政策局コンテンツ産業課 |
電気・ガス・熱供給 | 電気 | 電力・ガス取引監視等委員会相談窓口 |
ガス | (プロパンガスに係ること) 資源エネルギー庁資源・燃料部燃料流通政策室 |
|
(都市ガスに係ること) 電力・ガス取引監視等委員会相談窓口 |
||
情報通信業 | 情報サービス(ソフトウェア作成業等) | 商務情報政策局情報産業課ソフトウェア・情報サービス戦略室 |
運輸、郵便 | 通関業(外為法関連貨物の場合) | (安全保障関連貨物・技術関連(輸出/取引許可)に係ること) 貿易経済協力局安全保障貿易審査課 |
(上記以外の輸出入承認/取引許可に係ること) 貿易経済協力局貿易審査課 |
||
卸売・小売 | 繊維・衣類等卸売 | 製造産業局生活製品課 |
建築材料、鉱物・金属材料等卸売 | (建築材料に係ること)製造産業局生活製品課住宅産業室 (鉱物に係ること)資源エネルギー庁資燃部鉱物資源課 |
|
農業用機械器具卸売 | (農業機械に係ること) 製造産業局産業機械課 |
|
自動車卸売・小売 | 製造産業局自動車課 | |
自転車卸売・小売 | 製造産業局車両室 | |
電気機械器具、その他の機械器具卸売 | (民生用に係ること)商務情報政策局情報産業課 (産業用に係ること)製造産業局産業機械課 |
|
化粧品卸売・小売 | 商務・サービスグループ生物化学産業課 | |
ペット用品小売 | 製造産業局生活製品課 | |
百貨店・デパート、総合スーパー、ショッピングセンター | 商務・サービスグループ消費・流通政策課 | |
コンビニエンスストア | 商務・サービスグループ消費・流通政策課 | |
ホームセンター | 製造産業局生活製品課住宅産業室 | |
ガソリンスタンド | 資源エネルギー庁資源・燃料部燃料流通政策室 | |
通信販売 | 商務・サービスグループ消費・流通政策課 | |
金融、保険業 | クレジットカード業 | (キャッシングサービス以外に係ること) 商務・サービスグループキャッシュレス推進室 |
不動産、物品賃貸業 | リース業 | 商務・サービスグループ消費経済企画室 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 広告業 | 商務情報政策局コンテンツ産業課 |
写真館 | 商務・サービスグループサービス政策課 | |
生活関連サービス、娯楽業 | エステティック業 | 商務・サービスグループヘルスケア産業課 |
リラクゼーション業 | 商務・サービスグループヘルスケア産業課 | |
ネイルサービス業 | 商務・サービスグループサービス政策課 | |
葬儀業 | 商務・サービスグループサービス政策課 | |
結婚式場業 | 商務・サービスグループサービス政策課 | |
競輪場、小型自動車の競走場 | 製造産業局車両室 | |
フィットネスクラブ | 商務・サービスグループヘルスケア産業課 | |
ゴルフ場、ゴルフ練習場、テニスクラブ、ボーリング場 | 商務・サービスグループサービス政策課 | |
遊園地 | 商務・サービスグループクールジャパン政策課 | |
カラオケボックス | 商務情報政策局コンテンツ産業課 | |
教育、学習支援業 | 学習塾 | 商務・サービスグループサービス政策課 |
習い事教室 | (英会話教室等に係ること) 商務・サービスグループサービス政策課 | |
サービス業(他に分類されないもの) | コールセンター | 商務・サービスグループサービス政策課 |
展示会企画・運営 | 商務・サービスグループクールジャパン政策課 |
ただ、相談窓口こそ、業種にわかれて記載されているのですけれども、(4)環境の整備との関係では、
法第5条においては、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(施設や設備のバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)を、環境の整備として事業者の努力義務としている。環境の整備においては、新しい技術開発が投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待される。また、ハード面のみならず、職員に対する研修や、規程の整備等の対応も含まれることが重要である。
障害を理由とする差別の解消のための取組は、法や高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成 18 年法律第 91 号)等不特定多数の障害者を対象とした事前的な措置を規定する法令に基づくこのような環境の整備に係る施策や取組を着実に進め、環境の整備と合理的配慮の提供を両輪として進めることが重要である。
環境の整備は、不特定多数の障害者向けに事前的改善措置を行うものであるが、合理的配慮は、環境の整備を基礎として、その実施に伴う負担が過重でない場合に、特定の障害者に対して、個別の状況に応じて講じられる措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る一例は別紙のとおりである。
なお、多数の障害者が直面し得る社会的障壁をあらかじめ除去するという観点から、他の障害者等への波及効果についても考慮した環境の整備を行うことは有効である。また環境の整備は、障害者との関係が長期にわたる場合においても、その都度の合理的配慮の提供が不要となるという点で、中・長期的なコストの削減・効率化にも資することとなる。
基本指針をだいたい引っ張ってきてる感じですね。「各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る一例は別紙のとおりである。」とあって、別紙に具体例が示されるわけですが、国交省のように、別紙に記載されている例示が業種に分かれてないという。
たとえば、対面の小売業と、オンラインの通信販売業では、求められるものが異なってくると思うのですが、画一で示して本当にいいんですかねえ…。まあ、障害者当事者団体が物申す場面だとは思いますけど。
とまあ、こんな感じでこれから各省庁の対応指針のパブコメがたくさんできてます。興味のある方はe-Gov パブリック・コメントを観測しつつ、パブコメを送ってみてはいかがでしょうか。
*1:基本方針と対応指針の関係性については、障害者差別解消法に基づく基本方針の改定にある、障害者差別解消法に基づく基本方針の改定の「第4 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項」に具体的に書かれています。
*2:こんな感じで各省庁ごとに所管事業が異なるわけですから、情報アクセシビリティにだけ着目するとしても、各省庁分だけ見ていく必要があるわけですね…。これが縦割り行政というやつですかね。